ヒビムシ 第1回


沢田佳久
(第11号で「五十円玉はどこだ」執筆)

 
 
 
 
 
「さいきん何曜日かわからなくなる.交流戦に入ってから特にそうだ.ここに日々の彷徨徘徊を書くノルマを,自らに課すことによって節目をつけようという目論見.昆虫の生態写真を立体撮影するという行為を中心に据え,なにか見つかったらその事を書き,何もみつからなかったらその事を嘆くことにしよう.とれとれピチピチの虫の話を書けば歳時記的な意義があるのでしょうが,半月ほど前のことを読まされることになります,この欄の読者は.…」みたいな開闢の詔を書いて放置.

6月22日(土)
 交流戦は終わって,リーグ戦が再開しつつある.書かせてくださいと申し出ておきながら,結局しめきり間際まで何を書くか決まらない.まぁこのスリルを求めていたのだが.
 どこで見つけたどの虫の事を書くか,ずっと遡ってネタをさがすか? やはり絵日記的に最近のネタでいくべきだろ,とか,アレコレ考える.ハードディスクの写真のフォルダを巡っていくと,いろいろ寄り道をしてしまう.数日〜数週前の写真を繰るだけで,再探訪的な心境になるものだ.
 ほほぅ,そういう手もあるぞ.つまり,執筆時点は執筆時点であって,それから少し前の事を,思い出しつつ,関連した調べ物をしつつ,書くという手だ.
 

 

 というわけで,第一回は「6月22日に,13日の写真を繰りつつ,書いている」という状況です.

 この日は「笠形山林道」という所をうろついたのだ.この場所は徘徊先として最近開発中のサイトである.南北に走るけっこう険しい山脈を横切って東西の県道,つまり峠越えの道が3本ある.そして近年,それらを南北につないで山脈を縦走する林道が断続的に整備されてきた.それが最近ほぼつながり,車で入りやすくなったのだ.スギなどの植林が多いが,広葉樹の二次林もあって,道路沿いを歩くだけでいろいろと虫を見つけることができる.

 

 
キボシアシナガバチの女王(上下とも立体写真。見方は文末に)
 

 

 写真のキボシアシナガバチは,たぶんこの巣の創設者である.女王蜂だけど手下(娘)たちはまだ卵なのだ.ウリハダカエデの大きな葉の裏に巣をつくり始め,いまのところ部屋の数は5つだけである.まだ一匹も孵化してないようだ.
 幼虫が育ち始めると,女王蜂は餌を運んできて幼虫たちに与え続けることになる.この時期を乗り切るのが難関なのだろうと思う.娘蜂たちが順調に育って羽化した暁には膨大な労働力となるはず.そして女王は産卵に専念できるのだ.

 春から初夏にかけて,アシナガバチ類の巣作りがいろんな場所で見られる.だが「そこはアカンやろ」と思う場所に作っていたりもする.ガードレールのわずかなオーバーハングに作っているのをよく見かけ,暗澹たる気持ちになる.このような場所に作られた巣が秋まで残ることは,まずないからである.実際には成功率の高い場所を選んでいる女王がほとんどで,単に徘徊者の目線からはガードレール下が目立つだけなのかもしれないが.

 世間では「ハチ⇒刺す」とのイメージが定着しているが.ハチは一般に,さほど恐ろしい虫ではない.特にアシナガバチの類いは,適度な大きさといい,表情の多様性といい,撮影対象としては優れたモデルさんだと思う.イモムシを捌いて肉団子を作っている状況とかインパクトのある写真になる《今後,そのテの画像も掲載します.嫌いな方はご注意ください》.

 あと,この日はほかにコレといった虫が見つからず,側溝の上にぶら下がるように作られたモリアオガエルの卵塊とか,たわわなキイチゴの実とかを撮っている.モリアオガエルの姿は見つけられなかったが声は聞こえたな,とか,キイチゴの実をかなり食べたな,とかを思い出したのであった.

 

 
キイチゴ(木苺)
 

 

 こういう真っ赤な物はカラーアナグリフ(カラーの青赤立体写真)にしにくい.青赤メガネで見ると左右で違いすぎてしまうのだ.残念だがモノクロで青赤写真に….
 この場所のキイチゴは赤いけれど,その後,別の場所で黄色いナガバモミジイチゴがあり,これもかなり食べたな,とかも思い出す.たいていは鳥や虫に先をこされてしまい,状態の良い実が残ってないのだが,今年は結構いけてるのである.キイチゴの立場としては,実をだれか動物に食べさせて,どこか遠くで排便してもらって発芽,という算段なのだろう.でも筆者の場合,トイレで出しちゃうからなぁ… 野糞は何年もしてないな《そのテの話題が嫌いな方はご注意ください》,とか思考は発散.
 13日の彷徨回顧はなんとなく終了するのであった.

 ほほぅ,良い手だ.これでいこう.

 
 

◆立体写真の見方◆

同じような2コマが左右に並んだものは「裸眼立体視平行法」用の写真です.
平行な視線で右の目で右のコマ,左の目で左のコマを見ると,画面奥に立体世界が見えてきます.
大きく表示しすぎると立体視は不可能になります.

色がズレたような1コマのものは「アナグリフ」です.
青赤の立体メガネでご覧ください.
メガネは右目が青,左目が赤です.
緑と赤の暗記用シート等でも代用できます.

 
 
 
 
 
-ヒビレポ 2013年7月7日号-

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