薔薇の木にどんな花咲く?  第1回


竜 超
(第12号で「『薔薇族』継いじゃいました。」執筆)
 
コミック◎猪口コルネ
 
 
 

はじめまして。竜 超(りゅう すすむ)と申します。『レポ』本誌には12号から参加させていただきまして、その縁で今回から『ヒビレポ』の木曜日を担当することになりました。これからよろしくお願いします……と、これだけ読んでも、いったい僕がナニモノなのか判らない方がほとんどでしょう。失礼しました。まずは素性から明かします。

えーと、皆さんは『薔薇族』という雑誌があることを御存知でしょうか。それは端的に云うなら「1971年に創刊された日本初の同性愛マガジン」です。2004年に33年間の永い歴史に最初のピリオドを打ったあと、短いスパンで復刊と休刊とを繰り返し、現在は第5期版が刊行されています。そして僕は、その5代目『薔薇族』を作っている2代目の編集長なのです(ややこしいなァ)。今日までの軌跡については『レポ』12号のほうにたっぷり書いたのでそちらを読んでいただくとして、今回は当連載の内容についてご説明させていただきます。
 

 
ゲイ、ホモ、オカマ、クィア……etc. 世間からいろんな呼び名をつけられている同性愛者ですが、たぶん非当事者のみなさんの大半が抱いておられるイメージは、昨今のマスコミがまきちらしている「おねェ系」というヤツだろうと思います。
「竜さんもやっぱり女装とかするんですか?」
「フツーにおねェ喋りとかしてくださっていいんですよ」
「新宿二丁目の面白いスポットとか教えてくださいよォ」
マスコミ人・一般人のべつを問わず、一見サンの中にはこのテのことを口にされる方が多いんですが、あいにくと僕の回答は彼ら・彼女らの期待を全てにおいて裏切ってしまいます。

「女装とかする人って、同性愛者の中でも希少なんですよ。それをしちゃうと、モテ競争から自動的に脱落しちゃうから」
「おねェ喋りってネイティヴなものじゃなくて、鍛錬して身につけるものなんですよ。あいにくと僕にはそれを学ぶ根性も才能も必然性もないんでネ」
「あー、すいません。生理的に乱痴気騒ぎは苦手なんで、二丁目には基本的に行かないんです。呑むなら静かな場所で人生論とか語りたいクチなんで……」
たいていの場合、こう答えると、しばしの沈黙の後で「…………あー……そーですか…………」という薄〜〜い返事が聞こえてきます。そして僕はあからさまに落胆の色を浮かべている相手にむかって「ご期待に添えなくてすいませんね」と謝るのです(いや、べつに謝罪する必要はないんだけど一応、ネ)。

マスコミが好んで取り上げる同性愛者像というのは、大別するとつぎの4つになります。
(1)女装やらおねェ喋りでアイデンティティを保つコミック系の人(主に民放バラエティ番組に登場)
(2)あれこれ悩んでいて社会的救済を必要とするナーヴァス系の人(主に公共放送の福祉番組に登場)
(3)四六時中セックスのことしか考えていないエログロ系の人(主にゴシップ系の記事・番組に登場)
(4)些細なことにもすぐに抗議をするポリティカル系の人(主にニュースやドキュメンタリーに登場)

こうした人たちも同性愛者のコミュニティ内には確かにいますから、メディアがそれらを紹介すること自体を責めるつもりはありません。とはいえ、同性愛者がその4パターンしかいないかのような描き方をされてしまうのは、やっぱり困ります。それはまるで地球の裏側の国から来た取材陣が、富士山のてっぺん(もしくは屋久島の古代森)を映して「これが日本です!」と自国で報道するようなものだからです。そこも日本であることに違いはありませんが、あまりに極端なシチュエーションすぎて一般的な日本像とは大きくかけ離れていますから。

唐突で恐縮なんですが、みなさんの頭の中に「四角形」を思い浮かべてみてください。前述の4パターンの人たちというのは、僕に云わせればその「4つの角」みたいなものなのです。そして大半の同性愛者たちというのは、角ではなくて「辺」の部分に属しています。とくに滑稽でも、べつに可哀想でも、云われるほど性に飢えているわけでも、やたらに政治的でもない「ごく一般的な庶民」がほとんどだろうと、僕は思っています(かくいう僕も「辺」に属する小市民です)。

大手メディアが「角」の人々ばかりをネタにするのは、ただ単に「派手で目立つから」に過ぎません。「いや〜、べつに不満と云うほどの不満とかはないですヨ。仕事もソツなくこなしてますし、同僚や学生時代の悪友連中と呑みに行ってバカ話とかしてればストレスも発散できますし。あ、来月には係長になります」みたいな同性愛者を取り上げてもネタとして成立しにくいので、なにかしら極端な部分をもった人たちを血まなこになって探し出してくるのです。

マスコミ——中でも「テレビ」というのは「刺激性」を最も重視するメディアであります。テレビ離れが進み、かつてのような視聴率が稼げなくなっている昨今、そうした姿勢は年々強まる一方です。語尾に「!」がつかないような情報では視聴者は目をむけてくれないと病的なまでに思い込み、「!」がつかないネタなら大半を捏造してでも「!」をつけてしまいます。料理にたとえるなら「シンプルかつ絶妙なる味つけで素材本来の持ち味を活かす」のではなく、「甘味料やら調味料やら着色料やらをドバドバぶちこんで、とにかく刺激のある味に変えてしまう」みたいな感じですネ。

当連載では毎回、同性愛者コミュニティ内の、大手メディアが取り上げない「辺」の部分の人々にスポットライトを当てていきます。「え〜、おねェも女装も出てこないのかよォ」と不服に思われる方もおられるでしょうが、いやいや、「地味だけれどもジンワリと面白い」「なんだか判らないけどミョーに笑える」そんな話がけっこうあるんですヨ。

大手メディアのコンテンツ制作姿勢には懐疑的な僕ですが、かといって「マスコミが取り上げているのは虚像で、こっちが実像!」なんて思いあがったことを云うつもりはありません。僕が扱う話題にしたところで、無限に広がる(?)ゲイ社会の中のごく一部分に過ぎないのです。とはいえ、日々量産され続けるステレオタイプな情報に食傷気味な方にはソレナリに楽しんでいただけるかナ、という自負はあります。

いろいろと先入観もおありでしょうが、どうぞ一度だまされたと思ってご試食なさってみてください。いや、大丈夫。ちょっと変わった味かもしれませんが、べつに食アタリとかはしませんので。

 
 

 
 
 
 
-ヒビレポ 2013年7月4日号-

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