「食い物の恨み」は消えず 第16回

魅惑のコロッケ弁当 ポテトコロッケじゃなかった編

 
下関マグロ(「池袋の穴」連載中)
 
 
 

 
 
買ってきたコロッケ弁当のフタを開け、
さあ、コロッケにソースをチューチュー注入して食べようと思ったら、
なんてこった、ついているソースは小さなボトルに入れられたものではなく、
ビニール袋に入ったものだった。大問題だ。
これじゃソースをチューチューと注入ができないではないか。

そういえば、さっき弁当を買って帰る途中に「折箱・割箸」という看板を見た。
再び家を出て、さっきの看板がある店で
「醤油鯛ありますか?」
と聞いてみた。そう、醤油鯛だ。
季刊レポが主宰する第一回の「笑う本棚大賞」を受賞した
『醤油鯛』(アストラス/沢田佳久著)を読んでいたので、
つい通ぶって、そんな言いい方をしたのだ。
しかし、なにかの梱包作業をやっているご主人には通じない。
もう一回、はっきりした発音で言ってみたがダメ。仕方なく
「醤油とか、ソースを入れる小さな……」
と言うと、店の主人は
「ああ、タレビンね、そこにあるよ」
と、あごをしゃくる。その方向を見る。
ビニール袋に入った多数のタレビンがあった。
 

 

うな重の弁当とかを買うと中に入っている、
タレ入れぐらいの大きさのタレビンだ。
これじゃ、ちょっと大きいいな、他にはないとのことで、帰宅。
自宅キッチンの引き出しなど、あちらこちらを探してみると、
引き出しの奥にあった。
あった、あった、あったと、小躍り。

 

 

さっそく、小皿にスースを移し、容器へ吸い上げる。
そういえば、中学、高校の頃、時々、この作業、手伝いさせられたなぁ。
小皿に入れたのをチューチュー容器に吸わせるのだ。
そうそう、醤油とソースを両方持っていき、
きょうはどっちをコロッケに注入してやろうか、なんて考えたものだ。

 

 

というわけで、注入開始。
あれれ、なんか違う。こういう感じじゃない。
というか、コロッケが固くて、なかなかソースを注入できない。

 

 

カリッと揚がっているし、中は硬い。
このコロッケじゃない。そうだ、高校生のころ、弁当に入っていたのは、
カニクリームコロッケじゃなかったのか。
たしか、そうだ。
コロッケも茹でたジャガイモをつぶし、ひき肉などを混ぜて、
パン粉をつけてあげるものがそれまでの主流で、
お肉屋さんなんかで売っているコロッケもたいていこれだった。
でも、そうじゃないカニクリームコロッケというものが、
登場した。最初のころは、レストランとか、そういうところでしか出してなかった。
僕が小学生の頃、一度、母親が挑戦したが、うまくいかなかった。
コロッケが爆発したような、黒焦げ状態だった。
「ごめんね、こんなになって、でも味はそんなに悪くないから」
と言う母親。たしかにそうだった。
僕たち子供にはすこしまともなものが皿に盛られていた。
味はけっこうよかった。
しかし、以来、母親がカニクリームコロッケを作ることはなかった。

が、高校生になって僕の弁当のおかずとして、
カニクリームコロッケが登場したのは、
冷凍食品とおおいに関係がある。

このころ、油で揚げるだけで誰でも簡単にできる冷凍食品の
カニクリームコロッケが発売されていた。
僕の中学生から高校生だった1970年代、
冷蔵庫の冷凍庫部分はどんどん大きくなていった。
と、同時にさまざまな冷凍食品が登場してきた。
カニクリームコロッケもそのひとつだ。

そう思うと、俄然、カニクリームコロッケの弁当が食いたくなった。

コロッケの話はまだ続きます。

 
 
 
 
似顔イラスト/日高トモキチ
 
 
 
-ヒビレポ 2013年7月15日号-

Share on Facebook