どす黒い私  第3回


 
和田靜香
(第8号で「ハッケヨイ、和田翔龍!」を執筆)

 
 
 

 私は人の尻馬に乗るのは好きだが、自分から何かを始めるのは嫌いだ。だって自分で何か始めたら、それに責任を持たなきゃならないじゃないか。そんなの面倒。そんなの負担。そんなのウンザリ。逃げ場がない。途中で投げ出したら文句を言われるし。その前だって、あれこれ言われたりする。イヤっ。イヤっ。絶対にイヤっ。

 ずっとそう思ってぬくぬく生きてきたのに、ツイッターを舞台にして「選挙ステッカー」なるプロジェクトを始めてしまった。私としたことが! ハッシュタグなる、それ何語ですか?の「#」マークつけて、#選挙ステッカー、だ。

 これはアメリカのセレブたちがこのまえの大統領選挙のときに、自分の胸に「I VOTED(投票しました)」と書いたシールを貼り付け、「見ろよ」とばかりに写真をツイッターにアップしていたのを、中村明美ちゃんというニューヨーク在住の友達のブログに見つけたのがきっかけ。こういうのいいなぁと思ったんだよね。何せミーハーだから。ロック・スターとかがやってるの、なんでもカッコよく見えちゃう。「日本もこういうことやればいいのよ!」とかすぐに叫ぶ欧米かぶれの昭和なオバさんだ、私は。

 でも、そうつぶやいたツイートを、けっこうたくさんの人がリツイート(拡散)してくれて、へぇ、みんなもそう思うの?とそのときは思ってた。思ってて、覚えてて、そしてこのあいだの東京都議会選挙。投票率が43,5%で過去2番目に低かった、というのを聞いて、ドッカ〜〜〜〜ンしてしまった。
 

 

 一体、都民は何を考えてんだ? オリンピックのために「45億ドル アリマスゥ ギンコウニ、キャッシュ デスゥ」なんてテカテカ顔して海外で変な身振り手振りで話す都知事を「おいおい」と止める気はさらさらないのか? 健康保険が一気に何倍にも上がったり、都営住宅なんて15年、一戸も新設されてないんだよぉ。なのに、ああ、アタシの人生どうなるのかなぁ?なんて空仰いで、神社行って祈って、神頼みして、パワースポットなんて行って、誰かがなんかしてんの待ってるだけか? えっ? それはお前じゃ? ま、ま、そうだが、そうだが、しかし、選挙には行く、私は行く。行くよ。しかし選挙にも行かないで、それが自分の運命を決める、自分の夢や希望をつなぐたった1本の紐だとも気づかず、のうのうと生きてるだけって。あんたの人生、ずっとそのまま! いや、どんどん悪くなっからね! おまえの母ちゃん、でべそっ! と叫んでやりたくなった。

 でも、叫んでも、そういう人に私の声なんて届きゃしないから、愚痴半分でまたツイッターで選挙ステッカーのことをちょっとつぶやいてみたら。あらら。「でべそっ!」と叫びたかった仲間がいたんだ。友人で絵本作家のたごもりのりこさんや、さすがツイッター、一度もお会いしたことはない高円寺書林さんという人。この2人がなんだか勢いづき、「じゃ、始めましょう〜〜」なんて言われて始めることになった。えっ? と思いながら、うん、と答え、 #選挙ステッカーの怒涛の日々がそっから始まった。

 いや、最初はぜんぜん怒涛じゃなかった。「ちぇ、誰も反応してくんないぜ」なんてグチっていたが、たごさんや、たごさんのお友達のイラストレーターさんがステッカー用の絵を描いてネットにアップしてくれ、さらに自分も下手なネコ絵なんて描いてツイッターに添付してあげたりしていたら。あれ? あれれ? だんだん、だんだん、だんだん、広がってきちゃって。そこへ「レポ」のカナさん登場。「togetterでまとめ作れ」などと、ネット社会のことなんてこれっぽっちも分からない私に指令を急に出してくる。虎の親に崖から突き落とされた気分だ。しかし、さっぱりわからならい、その、トゥギャりました、なるものをやらなきゃどうにもならないわけか! と、腹をくくり、一晩かけてなんとかトゥギャリ、そしてそこから怒涛のように#選挙ステッカーな日々が始まって、まだ、正直、ほんの数日なんだ。うん。

 でもどんどん広がって、たくさんの人が見てくれて、いろいろなクリエイターさんが絵をツイッター上に挙げてくれて、わ、わ、私は津田大介か? ネットでいろんなこと始めちゃいますなのか? などと妄想したり。しかし津田大介だってテレビとか出てっからの人気であり、選挙ステッカーだってツイッターにいるだけじゃダメだ! と、インクとシール用紙をヨドバシカメラで買って来て、ギーコギーコとプリントして、切り取り、色んな人に強引に送りつける作戦も始めた。

 しかし、やりながら、果たしてこんなことやって意味あんのか? 時間と金の無駄じゃ? 第一、私、なんだかいい人みたいなじゃないか? なんか政治とか語っちゃうエラソーな人じゃないか? それ、違うんじゃないか? だって私のウリは虚弱でダメな人だよ。ハッシュタグつけんなら #虚弱、 #ウツ、#ワイパックス(注:安定剤です)、の方じゃないの? とかグルグル思った。グルグル思いながら、友達の下間さんがたくさん描いてくれた選挙ステッカーのかわいい絵を、はさみでチョキチョキ切り抜いていた。

 それにワアワアいっしょに盛り上がってくれる人はいっぱいいるが、逆に友達でもまったく無視の人もいっぱいいる。そういう人はきっと、ああ、和田ちゃんたち、なんか馬鹿騒ぎしてんな。何やってんだろ? そうやって騒いだって仕方ないのに、とか。そんなことしても意味ないよ。ツイッターだけの小さな土俵で馬鹿みたい、とか。だいたいダッセーよな、とか。きっと思ってんだろうな〜と、容易に想像できる。今、自分らはなんだか熱くなってるが、「ハシャいでる人」たちに、世間はそうそう甘くない。去年、官邸前の反原発デモが盛り上がったときだって、盛り上がる人と、それを批判する人なら、批判する人の方が多かったし。だいたい私自身、「ああいう場でさぁ〜、ふるさと、とか歌わせないで欲しいんだよねぇ。ダッセ〜」とかさんざ言ってた。「ふるさとより、デスメタル歌えよ」とかツイートしたら逆上したオバさんたちから大攻撃されて、炎上したし。でもって、今だってああいう場でいきなり「歌」とか出されちゃうと、「ついていけないぜ」とそっぽ向いちゃう口だから。「ハシャいでる自分ら」に注がれてるであろう冷めた視線ぐらいは分かっている。

 でも、今は思う。いいんだ。いいんだ。別に。冷めててくれ。そこで。冷めてていいから、でも、投票には行けよ。冷めてて投票にも行かないなら、それはやっぱり「お前の母ちゃん、でべそっ!」だからな。

 とにかくこれの目標は、投票する人を1人でも増やすこと。日ごろは#虚弱、#尻馬、#文句言い、の私だが、今だけは、今だけは、文句は言わず、ひたすらその目標だけを、キラキラした瞳しちまって、アホみたいに突き進むしかないと思ってる。

 いいよ、いいよ。冷めて見ててよ。いいから。そこに、ま、座っててよ。でも7月21日は投票所へGO!だ。

 
 
 
 

-ヒビレポ 2013年7月19日号-

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