「食い物の恨み」は消えず 第18回

魅惑のコロッケそば編

 
下関マグロ(「池袋の穴」連載中)
 
 
 

 
 

コロッケについてあれこれ書いているのだけれど、
コロッケそばを忘れていた。

「コロッケそば」というのは実にユニークなポジションにある食べ物だ。
まず、そばといいながら、蕎麦屋で出しているところはほとんどない。
出しているのは、立ち食いそば店である。
ただ、立ち食いそばの店に必ずあるメニューかというとそうでもない。
扱っていないところもけっこう多い。
この原稿を書くためにいくつかの立ち食いそば屋5軒に行ったが、
探している時に限ってどこにもなかったりする。そんなものだ。
 

 

大学生までコロッケそばを食べた記憶があまりない。
幼稚園から大学生まで僕は山口、広島、大阪と移り住んだのだけれど、
自分の記憶の中でコロッケそばが登場するのは、
東京に来てからだ。
それ以前にも食べていたのかもしれないけれど、
どうも、思い出せない。
が、東京に来て食べたコロッケそばを食べたとき、
ああ、東京で僕はコロッケそばの食べ方を発見した。

つまり、コロッケそばが提供され、すぐにコロッケに手を出してはダメだということ。
少し、つゆに浸し、衣がひたひたになるくらいで食べるのがいい。
たぶん、揚げ置かれたコロッケのちょっと固めの衣が柔らかくなってきて、
そこへ箸を入れ、中のポテトを少しつゆに浸して口に運ぶと、歯ごたえのある衣と、
つゆに混ざったドロッとしたポテトが実にうまいのだ。

さて、この原稿も〆切近くなったので、いよいよ本気で探そうと思った矢先、
近くに「笠置そば」という立ち食い蕎麦屋があるのを思い出した。
笠置そばの店頭まで行ってみる。メニューに「コロッケそば」があるではないか。
時間はちょうどお昼前。そりゃ、入るでしょ。

入口には券売機がある。その中で、「コロッケ」の名前をさがす。
あった。あれ、これは「コロッケ丼セット」だ。うーん、あったあった。
「コロッケそば」380円。やったね。
お金を入れてポチッとな。と、千円札を入れるもなかなか受け付けない。
後ろに人がどんどん並び始める。焦れば焦るほど、ヨレヨレの千円札がウィンといいながら戻ってくる。
なんとか、入れて、食券をゲット。お釣りも忘れずに。

立ち食いかと思っていたが、椅子がある。
食券をカウンターの中の人に渡す。
食券を渡すと、席を確保し、冷水機でコップへ水を注ぐ。
このあたりはセルフサービスだ。
「冷やし海鮮かき揚げのお客様ぁ」
と、店の人は呼ぶ、呼ばれた人がカウンターまで取りに行くシステムだ。
再び「冷やし海鮮かき揚げのお客様ぁ」の声。
次も「冷やし海鮮かき揚げ大盛りのお客様ぁ」の声。
おやおや、いま取りに行った人は僕の後ろに並んでいたんじゃ…。
お店の人は、こちらを見て、
「コロッケそばのお客様、もう少しお待ちください。いま揚げておりますので」
と言った。ほーっ、揚げたてなんだぁ。
って、もう少し待つと、呼ばれた。

 

 

おお、いいルックス。湯気が出ている。
ちょっと衣に箸でふれると、硬めなのがわかる。
先に少しそばをすする。もう少し様子を見ながら、
おもむろにコロッケへ箸を入れる。

 

 

いい感じだ。おつゆと混ざった衣は少し硬く、
おつゆ混ざった中のポテトは柔らかい。
うまいなぁ。いっきにおつゆも飲んだ。

食べ終わって、ふと気になったのが、
さっき、自販機で見た「コロッケ丼」だ。
いった、それはどういう食い物なんだろう。
カツ丼のように卵でとじられているのか。
それとも、ソースカツ丼のようなかんじで、
キャベツの千切りがご飯の上にのってて、
その上にコロッケがのっかっているものだろうか。
気になる。
次回はそれを食べに行こう。

重要なアレを忘れていることに気がついた。

コロッケの話はまだ続きます。

 
 
 
 
似顔イラスト/日高トモキチ
 
 
 
-ヒビレポ 2013年7月29日号-

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