どす黒い私  第5回


 
和田靜香
(第8号で「ハッケヨイ、和田翔龍!」を執筆)

 
 
 

 これを書いている今は2013年7月21日夜で、参議院選挙の結果でTVは大はしゃぎをしている。

 「どす黒い私 第3回」で書いたように、私は6月24日から「#選挙ステッカー」 なる活動を始めちまって、そこからてんやわんや。あれやこれやのうちに協力してくださる人たちが増え、文化放送の番組「飛べ!サルバドール」に送ってみたら、すぐにパーソナリティの吉田照美さんが番組の冒頭で紹介してくれたのを皮切りに、「今回の選挙でツイッター担当でして」という、朝日新聞大阪支社の人からいきなり連絡があって電話インタビューを受けて、関西四国版で紹介された。そこから朝日新聞デジタル版が全国的に紹介してくれ、ついに全国進出っ! さらには友人のシモマンの友達が社会部にいる東京新聞にも連絡していたら、だいぶたってから電話がかかってきて、「じゃ、今、近所にいるから行きます〜」なんて軽いノリで本社に行って、べちゃべちゃしゃべり、ワハハハ笑って取材終了だったから、きっと三面記事にかわいく載るのかな〜なんて思っていたら、ド〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ンッ! いきなり夕刊で一面トップをでかでか飾るという事態にまで至った。よもや私の人生で、新聞の一面に自分の名前や写真が出るなんて! そんなことがあるなんて! 友達は「和田、連続殺人犯並みのすごさ!」と言ったけど、まさにそのとおり。「いっぺんにたくさん買ったら変だよな」と心配して地下鉄の売店を渡り歩きながらコソコソ1部ずつ新聞を買ったんだが、手にとった新聞に自分の顔があって、あわててそれを隠しながら買うって……売店のオバちゃんになんて気づかれやしないのに……ほんと、逃亡犯の心境だったわ。
 

 

 しかも思えば、ついこの間まで私はウツウツのどん底にあって、人生には何もない、夢も希望もゼロ。もう死ぬ、死ぬ、死ぬ、とばかり言ってたのに。その私が新聞の一面に載る。人生って全く何が起こるかわからないということを、ジェットコースター並みの上下動で体験してしまった。本当にびっくりすぎる。

 とは言え「#選挙ステッカー」では、私は単に発案者にすぎず、しかも元々はアメリカのパクリなんだし、アワアワしながらリツイートしてたにすぎない。そして途中から、ゴヒさんという見たことも会ったこともない構成作家さんらしい女性が登場し、彼女があれこれ漫画家さんに声を掛けてくれ(その声の掛け方の軽やかさったら! 私には決して出来ない軽やかさなのよ! ああ、この軽やかさを身にまといたい! とウジウジ思っていた、実は……)、まとめまで作ってくれ、大活躍してくれたことがとても大きい。なんて、ありがたいんだろう! そしてもちろん、作品を作ってくださったみなさんが、 #選挙ステッカー を育てて大きくしてくれた。

 作品を寄せてくださった方々のリストは以下の通り。
@katoa2c/たごもりのりこ・絵本作家/村崎みどり・イラストレーター/石渡希和子・ライター/ソノベナミコ・イラストレーター/下間瑞樹・イラストレーター/松本春野・絵本作家/@gwenshiba/ゴトウアキオ・ライター/どこデモ本舗・デモグッズ屋/阿部つよし・グラフィックデザイナー/poundhound・webデザイナー/吉田戦車・漫画家/@marotora/@sakura_cherry/@BOBICO/いしかわじゅん・漫画家/@bonnieidol・ ライター/江口寿史・漫画家/さかきくみこ・イラストレーター/@yasnot/ひうらさとる・漫画家/もんじゅ君・高速増殖炉/(それから私自身も)

 見よ、この錚々たるメンツを! もし、この事業を総務省のオタクっぽい人が思いつき〜〜の。代理店に下ろし〜〜の。発注し〜〜の。だとしたら何億動いただろうか? それが予算ゼロ! ゼロでこれだけの方々が作品を提供してくださり、それを一般の方々がリツイートしまくり、ダウンロードし、印刷し、貼り貼りし、広めてくれた。総事業費ゼロ円っ! 誇るべきゼロ円っ! ゼロ円でやったことには誇りを持っていいと思っている。

 とはいえ、じゃ、どんだけ効果あったわけ? と言われたら分からない。投票率も50%前後と相変わらずの低さだ。それじゃ、ただハシャいでただけじゃん? 馬鹿じゃん? そう言われたら、そうかもしれない。でも。私は確かに見た。今朝(投票日朝)、江口寿史さんがステッカー作品をツイッターにアップしてくれたのを見た人が「あ、今日、選挙か。忘れてた。行かなきゃ」とツイートしていたのを! たった1人しかもしれないし、もしかしたら何百人もいたかもしれない。それは全体からしたら0.00001%の問題だったかもしれない。でも。それでも投票へ行く人を増やしたと思う。

 だから、私はこれを続けたいと思う。これはスタート。今、手元には作品という財産が残っている。選挙はこれからもある。社会はこれから色々と変化し、それは恐らくこれまで私たちが体験したことのない気味の悪い変化であろうし、そういう中で選挙がまたある。そこで無関心の人々が少しでも選挙に目を向けてくれるよう、「#選挙ステッカー」を活用し、広げていけたらいいな、と今はまじめに思うのだ。

 やりゃ、なんとかなる。
 やりゃ、できる、とまでは安易に言わない。
 やりゃ、なんとかなるのだ。なんとか。それを今回知った。できる、と胸を張れなくて。なんとかなる、だけだって、いいと思わん?
 なんとかなる、を重ねて重ねて重ねて。そのうち、できる、になるかもしれない。小さな力で、何かができる、かもしれない。ずっと死にたい死にたい死にたいと、何かあって落ち込む度に人生ずっとそう思い続けてきた私自身、やりゃ、なんとかなる、始めてみれば誰かが手を差しのべてくれる、と実感できた今回のことは、とても大きな意味がある。その思いを、きっと何千万人といるであろう、私と同じように希望を失くし、心の奥底でいつも死への憧憬を抱えているような人、特に若い人が、なんとかなると思えるようになったらエエなぁ〜などと、急になんだか、私、壮大な妄想を抱くようになってる。夢が広がってる。

 なるほど、人はこうやって「活動家」になっちゃっていくんだな、としみじみ思う、なう。そのうち私は怪しげなNPOとか作って、貼りついたような笑顔を浮かべ、ヒラリー・クリントンばりのスーツとか着ちゃって、ITな人たちとカタカナ言葉連発して語り合っちゃったりしちゃうんじゃないか? それとも頭にバンダナ巻いて、化粧っ気のない顔、ひっつめ髪でインド木綿の上下を着て、拳振り上げてデモに参加にするのかな?

 どちらもイヤやわ。どちらも。どちらもイヤだが、妄想は膨らませ、せっかくできた選挙ステッカー仲間たちと繋がり続け、相変わらずツイッター上でゆる〜くゆる〜く、しかし着実に、その輪を広げていけたら、と願う。
 
 と。ここでハッと思った。覚えてますかね? この「日々レポ」1回目で書いた「おみくじ」の話を……。あそこにあった言葉は、「然れどもこの時こそ熱意と具体的取り組みを持ち、信心を持って励めば禍を遁れて幸を招き、人の助けを得べし」って。ほ、ほ、ほ、仏さん、仏さん、あんた、あんた、このことだったの? ねっ? このことだったの? ほ、ほ、仏さん、あんた、ぜんぶお見通しだったの? ねっ? と、と、と、途端にうろたえる私。
 
 もしや私、ただ仏の掌の上でクルクルと廻ってたにすぎないのか? 三蔵法師と孫悟空。私はただの孫悟空。そうだったの? マジッ? ウソッ? なんたることっ!
 今さらそのおみくじを引いた「妙法寺」の出来る!っぷりに驚愕し、活動家より、頭剃って、寂聴庵にでも弟子入りしたがいいかな? などと思う選挙の夜なのでした。
 
 「#選挙ステッカー」にご協力いただいたみなさん、本当にありがとうございました!

 
 
 
 

-ヒビレポ 2013年8月2日号-

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