新宿ゴールデン街を飲み尽くせ! 第7回


 
コエヌマカズユキ
(第11号で「物書きにとってバー経営はメリットになるのか?」執筆)
 
 

先週は原稿を落としてすみませんでした。
あまりにも仕事が立て込み、先週は結局一軒も飲みに行く時間がなかった。ちなみにこの原稿を書いている8月12日(月)現在も、幾つもの締切に追われている。バーをオープンしてから、物書きの仕事はセーブしているものの、いつも締切に追われている状態になっている。カウンターに立っているときは、当然だが原稿を書けないため、執筆に割ける時間が激減したためだ。お店を始めてから1年2ヶ月。二足のわらじの生活に慣れてきたようで、実はまだまだ履きこなせていないのが現実なのである。本業は物書きなので、そちらに支障が出るようでは本末転倒だが、お店もやはり楽しいし大事にしたい。イベントや独自メディア「月に吠える通信」の強化も積極的にしていきたい。要するに、僕は欲張りなのだ。お店と物書き。二つを充実させて、自分の負担も減らすためには、時間の使い方と人の協力がポイントになってくるだろう。普段、感覚のままに生きている僕は、お金でも時間でも管理することが大の苦手。人に頼むのもあまり得意ではないので、そこをどうするか……というわけで今週の飲み歩き日記です。
 

 

<今週の酒>
◆8月5日(月)
日中からひたすら原稿書き。アルバイトさんがいる日なので、お店には原稿が一段落ついた夜の10時頃に向かう。常連客がやって来て、「面白い店があるから行こう」と誘われる。「15分だけですよ!」アルバイトさんに睨まれ、肩をすぼめて店を出ていく。案内されたのは、ゴーストライターならぬ「エンジェルライター」という、若い女性の物書きが働いている店だった。来年本を出すそうで、うちのお店でPRイベントをやりましょうと盛り上がった。ゆっくり話したかったが、たちまち15分が過ぎ、アルバイトさんから戻るよう電話が来たため、仕方なく店に戻る。

1軒目 珍呑(ちんどん)
ウイスキーロック、チェイサーにビール
¥2,800

※帰宅後にハイボール×4杯

 
◆8月6日(火)
この日もひたすら原稿書き。編集者から催促の連絡があり、猛スピードで仕上げる。夜はお店に立つ。
※帰宅後にハイボール×5杯

 
◆8月7日(水)
下戸なのにスナック研究をしている大学生のたえちゃんが来店。かなり天然で面白いキャラで、うちのお店の常連客たちからも可愛がられている子だ。研究のため、どこかいいお店を紹介してほしいとのこと。「予算は?」と聞くと「1000円です」。その額で飲めるお店はほとんどない。そこで、アルバイトさんにお店を任し、飲みに連れていくことに。

1軒目 スナックのら
ハイボール×2杯
※お店の方に1杯、たえちゃんはソフトドリンクを1杯
¥4,500

2軒目 シラムレン
いも焼酎ロック×2杯
※たえちゃんはお茶
¥2,600

2軒分のお代は僕が払ったのだが、「せめてこれだけ出します」と出された千円札がしわくちゃで、貧乏学生だという感じがヒシヒシ伝わってきて、「生活費に使いな」と返した。

※帰宅してハイボール×4杯

 
◆8月8日(木)
毎週月曜日にアルバイトで入ってくれている丹羽さんが、この日交際相手の七尾さんと入籍。めでたすぎる!!! 夜はお店に立ち、平和な一日を終えました。

※帰宅してビール×1本

 
◆8月9日(金)
うちのお店では週末の深夜になると、ルースターズの「テキーラ」をかけながら、ショットグラスでテキーラが振る舞われることがしばしばある。おかげで、これまで何人が潰れたことか。そのテキーラ文化を持ち込んだ張本人である、常連客のN岸青年が来店した。先週、誕生日を迎えた彼に、僕と常連客がそれぞれテキーラを1本ずつプレゼントした。来店したN岸は、早速テキーラを飲み始め、さらに僕にも勧めてくる。結局、二人で僕がプレゼントした方のテキーラを空けてしまった。
さらにこの日は、常連客の女子が来店していた。彼女は同じく常連客の青年に、ミカンとヨーグルトのお酒をそれぞれ一本ずつ、旅行に行った際のお土産として渡していた。ところがその青年は、初めてお店に来た若い女性客二人と、ほかのお店に飲みに行ってしまった。これが女子の逆鱗に触れ、お店の冷蔵庫で保管していたお土産のお酒を「飲んじゃおう!」と提案。僕とN岸は当然のようにこれに乗っかり、あっという間に2本のお酒を空にしたのだった。

テキーラ×ショットグラスで6杯くらい
みかんとヨーグルトのお酒×3杯ずつくらい

 
◆8月10日(土)
昨日に引き続きN岸が来店。もう1本残っているテキーラを飲みながら、またまた僕にも勧めてくる。昨日の酒がやや残っているため、テキーラがなかなか喉を通らない。そこでルースターズのCDをかけて、無理やり流し込む。ボトルがようやく空いた後、「何でこんな苦しい思いして酒飲んでるんでしょうね……」とN岸がポツリ。もっともな意見である。この後、N岸はさらにモヒートをおごってくれた。

テキーラ×ショットグラスで5~6杯
ビール×1本
モヒート×1杯

 
◆8月11日(日)
大阪在住の大学生Y山さんが来店。彼女が初めて来店してくださったのは昨年末だ。就活中だった彼女は、それから上京する度にお店に寄ってくれるようになった。雑誌記者志望とのことで、出版社に提出するエントリーシートや課題などを見させてもらい、僭越ながら意見を伝える、というやり取りを何度も続けた。僕など少しも役に立てていないとは思うが、結果、彼女は見事に内定をもらうことができたのだ。今は会社の課題をこなすため、月に一度上京しており、その度にお店に寄ってくれている。素直でまっすぐで好奇心旺盛で、とても感じのいい子だ。この日はY山さんと、ゴールデン街を飲み歩く約束をしていたのだ。だが、しかし……

1軒目 自分の店にて
ビール×1本、ハイボール×1杯

2軒目 赤花
ビール×1杯、泡盛ロック×1杯
ソーキそば
¥???

3軒目 ジャンジュネ
ハイボール×1杯、ウイスキーロック×1杯
¥???

4軒目 スナックのら
ハイボール×1杯
¥???

5件目 WHO
ウイスキーロック×1杯???
¥????

5件目の途中で、それまで楽しく飲んでいたのに、まるでテレビのスイッチを消したように僕の記憶はプツンと途絶える。潰れたのは多分、深夜2時くらいだろうか。目覚めたのは朝10時で、自分の店の床で僕は寝ていた。いつ、どうやって店に戻ったのか全く記憶がない。一人で泥酔するならともかく、若い女子をエスコートしているのに泥酔なんて、反省しきりである。それほど量を飲んだつもりはないのだが、連日のテキーラ暴飲が体に残っていたのだろう。一息ついてから、Yさんに電話&メールで謝罪したのは言うまでもない。本気で禁酒を考えた日だった。

 今週、改めて思い知ったのは、テキーラの恐ろしさだ。何人もの泥酔者を目の前で見てきたはずだが、ショットグラスに注がれると、ついつい後先のことを考えず飲み干してしまう。それはなぜか? テキーラはプロレスだからだ。「テキーラ飲みましょうよ。え、飲まないんですか? ビビってるんですか?」と相手の挑発を受け、「受けて立つ!」とリングに上がり、どっちがタフかぶつかり合う。そして試合後には、相手の度胸や飲みっぷりを認め合うのだ。プロレスの本場・メキシコで誕生したお酒だけに、テキーラ=プロレス説は間違いではないはず。そんな話を常連客の妙齢の女性に話したら、冷たい表情で「バカじゃないの」と切り捨てられた。

 
 
 
-ヒビレポ 2013年8月20日号-

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