ヒビムシ 第8回


やしろの森公園:ショウリョウバッタ

沢田佳久
(第11号で「五十円玉はどこだ」執筆)
 
 
 

8月6日(水)
 天気予報では今週から日に日に暑くなるので覚悟,みたいなことを言っている.しかしまだ梅雨をひきずっている感じ.あい変らず集中豪雨が各地を襲っていて,ラジオを聴いていると警報発令地域が移動していく様子がわかる.強烈な雨雲が紀伊半島から琵琶湖へ北上中だ.前の戦争でしばしば発令されたという「空襲警報」を思い起こした.「空襲」は過去の言葉になっていて,しだいに「空爆」に置き換わっているな,とか思う広島原爆忌である.
 大編隊の接近,進入では警報が出て,結果的に標的外だった街でも一々対応に追われたり,何度も「警報だけ」を経験したり,「作業中断でラッキー,でも腹へった」だったり,「こっちは解除」だったり,「とうとう来たか」だったり,他地域の情報が入らない不安の時間が続いたり,だったのだろうな,と想像.
 警報が出るだけで街は,人の営みは,それぞれの程度に麻痺する.高高度を単機進入の場合は偵察機とみなして警報は出ない.あの日もお座なりの迎撃をかけるだけでほぼ放置だったらしい(要出典?).
 

 

 この日は行きつけの「やしろの森公園」に行った.以前は「社町」だったのが,平成の大合併で「加東市」になっている.加は加古川の加.
 兵庫県内の高速道路に近い丘陵はことごとくゴルフ場になってしまった.その中でこの地域はなぜか教育研修施設が集中している.この公園も森林公園というよりは今流行の官製里山みたいな雰囲気である.共同農園や炭焼き窯などもある.
 散在する湿地をそのまま残しており,様子の異なる多様な水面をもつことでトンボなどの観察などに適した場所となっている.ここではカエルを調べているというマニアックな少年に出会って驚いたこともある.環境が人を育てる的なエラソーなことを考えてしまう.

 前々回の中山大杣池の回ではヤツメカミキリに言及しておきながら掲載できなかった.サクラの古木にいてコケに偽装しているやつだ.じつはその前に,このやしろの森公園にきたときに,ヤツメカミキリを見ている.そのときは発見直後に落下され,数時間後に行ってみるとまた居て,またまた落下されてしまった.たぶん同じ個体だろう.結局まともに撮影もできなかったのだが,いた株は覚えている.孤立した若いサクラの衰弱木である.で,今回はそのリベンジ.

 着いてすぐその株に直行すると交尾しているペアがいた.しめしめ.どちらかが前回の子か,両方別の子かは分からないが,元気にやってるようで何よりである.今回は警戒が甘く,楽に撮影させてくれた.結局二匹しか見つからなかったので,どちらかが前回の個体である可能性が高いと思う.

 

ヤツメカミキリ(上下とも立体写真。見方は文末に)

 

 このサクラは古木ではなく,残念なことに,ほとんどコケが生えていない.なので「コケにそっくり」な状況を示す写真にはならなかった.しかたがないので別の株で撮ったウメノキゴケを掲載しておこう.頭の中で合成してください.コレの上にコレが居るのをまのあたりにすると「生物ってよくできているなぁ」と思うわけです.

 

ウメノキゴケ

 

 この衰弱木からはところどころ樹液が漏れていて,クロオオアリが舐めていた.こちらも動きが緩慢で,大小の働き蟻が並んでくれたのでツーショット撮影.この違い,「兵蟻」と「働蟻」かと思っていたが「大型働蟻」と「小型働蟻」とするらしい.前者は頭部を使う作業,つまり獲物の解体などの作業に特化した型という事なのだろう.

 

クロオオアリの大小働蟻

 

 さて,この公園の散策コースでは各所に東屋が設置されている.今回は夕立が来そうな感じがあったので,東屋の一つを拠点とし,そこからあまり離れない範囲でいろいろ観察することにした.この東屋は柱や梁の隙間にドロバチの巣があり,天井にスズメバチやアシナガバチの巣があり,木材の表面はアシナガバチの巣材料として削られているという,ハチだらけの建物である.演壇(?)の下がアオダイショウの寝床になっていることを,私は知っている.
 床のコンクリートの割れたところに砂が溜まって蟻地獄ができていたりもする.が,蟻地獄の多い東屋は別にある.このあたりではめったに人に会わない.蛇マニアや蟻地獄マニアは育つのだろうか?

 予想通りに空が暗くなり,豪雨が来た.雷はたいしたことなかったが,鑑賞に値する降りっぷりだった.東屋からは四周の空の様子がよく見え,低い雲の動き速さに驚愕した.そんな中でもヒグラシの鳴き声は止まらなかったが,雨雲が通過して気温が下がるとパッタリとやんだ.このメリハリにも驚いた.明るくなった空の高いところを,既にツバメが飛んでいた.そして薄く虹が出た《虹はなぜ虫偏か?についての薀蓄は省略》.

 虹を撮ろうと試みたが,うまくいかなかった.虹は3D的に変則的な撮影対象である.花火やオーロラは立体的に撮影できるが,虹はちがう.
 虹は,或る”位置”に存在する”物体”ではなく,或る”方向”に見える”現象”である.光源の位置と観察地点との関係から,一定の”方向”に見える.ほぼ無限遠の太陽光でできる虹は左右の目で同じ方向に見え,従って無限遠にあるように見える.
 なので,虹の3D写真を撮ると,その虹は遠くの雲や山並みよりも遠くにある,ように見える.これは庭園のスプリンクラーの水煙を見下ろした際に見える虹でも同じだ.それも無限遠にあるように見え,写る.つまり地中深くにめり込んだ状態になってしまうのである.
 
 雨は上がったが,樹上からの雫がうざいので草原をうろつくことにした.既に大型のバッタの成虫が出始めているようだ.クルマバッタモドキ成虫を確認.これは飛んでいる姿の翅の模様で見分けられるのだが,写真は撮れなかった.ショウリョウバッタの雌成虫もいた.ショウリョウとは精霊のことだと思うが,あまりしっくりこない.ウィキには「精霊船」由来説が掲載されている.まぁ,時期的にお盆前後ということなのだろう.

 

ショウリョウバッタ♀

 

 帰りの車でラジオを聴いた.広島での試合は鳴り物なしの「ピースナイター」だそうだ.

 今回は「8月6日の夜中に当日の事を書いて,11日に加筆修正」という感じです.8日に緊急地震速報が出て,情報の意義とか,価値と代償のことを,たぶん皆んな考えました.
 
 

◆立体写真の見方◆

同じような2コマが左右に並んだものは「裸眼立体視平行法」用の写真です.
平行な視線で右の目で右のコマ,左の目で左のコマを見ると,画面奥に立体世界が見えてきます.
大きく表示しすぎると立体視は不可能になります.

色がズレたような1コマのものは「アナグリフ」です.
青赤の立体メガネでご覧ください.
メガネは右目が青,左目が赤です.
緑と赤の暗記用シート等でも代用できます.

別サイト「ヒビムシ Archives for 3DS」にはMPO版を置いています.3DSの『ウェブブラウザ』で「ヒビムシ Archives for 3DS」のサイトを参照してください.お好みの画像を(下画面におき)タッチペンで長押しすると,上画面に3Dで表示されます(数秒かかるかも).表示された3D画像ファイルは保存することもでき,『3DSカメラ』でいつでも再生することができます.

MPO版とは,複数の静止画を一つのファイルにまとめたもので,ここでは立体写真の左右像を一つにまとめたファイルです.3DSをはじめ,多くのmpo対応機器で3Dとして再生,表示することができます.PCやスマホ等でダウンロードできますので,各機器にコピーして再生してみてください.
 
 
 
 
 
-ヒビレポ 2013年8月25日号-

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