新宿ゴールデン街を飲み尽くせ! 第8回


 
コエヌマカズユキ
(第11号で「物書きにとってバー経営はメリットになるのか?」執筆)
 
 

 お盆真っ只中である。世間は帰省や行楽で忙しいだろうが、それらに全く無縁の僕は、いつも通り店を開き、原稿を書き、酒を飲み続けている。考えてみれば、年末年始もそうだったし、GWもそうだった。この先も同じような日々が続くのだろう。
 だが、そんな僕の日常に、今週ちょっとした変化が起きた。休肝日を取ったのだ。何でもない事に思えるかもしれないが、僕にとっては大事件だった。酒を飲まないことが、日常生活にあんなに大きな変化をもたらすとは、まさに目からウロコだった。というわけで、今週の飲み歩きです。久しぶりに新規開拓しましたよー!
 

 

<今週の酒>
◆8月12日(月)
 前日、飲んでいる途中に記憶がなくなり、目覚めたら自分の店の床で寝ていた。時刻は午前10時。この日は13時から取材があるのを思い出し、すぐさま飛び起きる。ケータイが見つからず、頭が割れるように痛かったが、それでも何とか帰宅してシャワーを浴び、着替えて取材場所へ。インタビューの途中、何度もえずきそうになりながらぐっとこらえ、何とか終わらせる。 
 夜はお店へ。昨日飲んだお店のスタッフから、「ケータイをうちで忘れていった」と届けていただき、安堵する。ところで、この日は感動することがあった。栃木県在住の女子が、わざわざうちのお店に来るために、ホテルを取って東京にやって来たのだ。僕は人の熱量を図るのは、第一に行動だと思っている。わざわざ時間を割き、お金を使い、お店まで来て下さったという、言葉が必要なくても伝わってくる熱意に感激しきりだった。ただ、僕は二日酔いでぐったりしていたそうで、彼女は遠慮し、アルバイトの丹羽さんにばかり話しかけていたという。お客様の前でグッタリした姿で立つなんて、バーテンダー失格だ。反省。今度は僕ともたくさん話しましょう。
 一方で彼女とは対照的に、来てほしくない客・N岸がやって来て、テキーラを僕に飲ませようとする。昨日潰れたばかりなので、さすがに躊躇していると「ヒヨったんすか?」とナメたことを抜かすので、一気飲みしてやった。アホだ、どっちも。

テキーラ×1杯
※帰宅後、缶ビール×1本
 

◆8月13日(火)
 お盆のためか、客足は少ない。混雑することはないが、空っぽになることもないという低空飛行だったが、終わってみればそれなりにお客様が来てくれた一日だった。平和な一日の流れのまま、この日は休刊日にした。ひたすら原稿書き。
 

◆8月14(水)
 昼からひたすら原稿書き。抱えている原稿があり、この日が山場だった。一日に3本書き上げ、お店へ。アルバイトの大橋さんがいるのをいいことに、客席でひたすら仕事。
※帰宅後は缶ビール1本
 

◆8月15日(木)
 何とか仕事が山場を越え、久々に落ち着いた気持でお店に立った。大富豪のチン先生がやって来て、ビールと電気ブランをおごってくださった。先生はいつも和服にサングラス。ただ物でない雰囲気を放っていて、実際に正体を口にしないのだが、ゴールデン街でそれを聞くのは野暮というもの。この日も景気のいい話をたくさん聞かせてもらい、電気ブランとビールをおごっていただいた。

電気ブラン×1杯、ビール×1本

1軒目 WHO
 その後、アルバイトさんにお店を任せてWHOへ。先週の日曜日、僕が記憶をなくしたときに飲んでいた店こそ、このWHOだ。僕が潰れた後、どのようなことがあったのか、スタッフに聞きに行ったのだ。そうしたら、あまりにも聞きたくないような話が続々出てきて、軽く絶望した。ここに書くのもはばかられる。自分の酒グセがそんなに悪かったとは……反省します。

ハイボール×1杯、ウーロン茶×1杯
¥2000
 

◆8月16日(金)
 お盆で帰省しているためか、週末になるといつも来る常連客の姿が見えない。そこそこお客様は来て下さり、楽しかったのだが、それでもいつもと違う不思議な感覚だった。僕はお店の常連客としょっちゅう飲みに行くし、遊びにも行く。多分、プライベートの友人より、常連客と飲みに行ったり、遊びに行ったりする回数の方が多いだろう。よく考えると不思議な関係だが、それでもこういう大事な仲間たちができたのは、お店を開いて最も嬉しいことである。

※帰宅後、缶ビール×1本
 

◆8月17日(土)
 お店が終わった後、常連客のTさんと飲み歩き。彼はかなりフットワークが軽く、ゴールデン街で僕の知らない店もかなり飲み歩いている。そこで、彼のオススメのお店を案内してもらうことにした。

1軒目 ハーメルン(新規)
 ゴールデン街には珍しい、オーセンティックな雰囲気のバーだ。とても落ち着けるし、値段も安い。美人バーテンダーが、プロのマドラーさばきでお酒を作って出してくれた。ゆっくり飲みたいときには最適です。

ハイボール×1杯
確か¥1200くらい

2軒目 ヅメバー(新規)
 すごく良いお店に出会った! と思える一軒だった。何と言ってもお店の雰囲気が最高。キレイ過ぎず、かといって不潔ではない、まさにゴールデン街っぽい庶民的でレトロなお店だ。役者をやっているというスタッフが出迎えてくれたというのも、ゴールデン街らしい。名物のコーヒーリキュールも飲みやすくて美味しく、ハマりそうだ。スタッフの方が、僕のお店のことを知っていて、今度遊びに行きますといってくださった。こういうところで繋がるのもゴールデン街のいいところですね。

コーヒー焼酎×1杯
確か¥1200くらい

3軒目 チリチリナイン(新規)
 若くてダンディなマスターがいるお店。彼が作ったというお通しのトマト煮込みが出て、その美味しさに感動してしまった。ワイワイ騒ぐのにも、しっとり飲むにもよさそうなお店だ。

ハイボール×1杯
¥1500

4軒目 バーバスター
 午前4時頃になり、最後は行きつけのお店へ。僕のお店の常連客の男女が二人で飲んでいた。実は、僕らが飲み歩いている最中、男子の方から「合流して一緒に飲もう」とずっと連絡を受けていたのだが、何やら二人が良い雰囲気だったので、気を遣って別行動していたのだ。遅い時間のためか、さすがに眠そうにしていた二人。今後、恋の進展はあるのだろうか?

ハイボール×1杯、テキーラ×1杯
¥2000
 

◆8月18日(日)
 アルバイトの大橋さんにお店を任せて、僕は帰宅。家で仕事に取組む。酒を飲まないと頭が冴えて、時間を有効に使える。素晴らしい。仕事や読書に充てる。

※休肝日

 
 今週は2回も休肝日を作った。そういえば。最後に休肝日を作ったのはいつだったか、全く思い出せない。思えば数年間、僕は毎日のように酒を飲み続けてきたのだ。酒を飲まないと、驚くべきことがいくつもあった。まず、本を読むと、内容をとてもよく理解できる。熟睡できて、目覚めもいい。次の日、仕事がめちゃくちゃはかどる。何ということだ。僕はここ数年間、星飛雄馬のように、体に負荷をかけるギプスを身に付けて生活していたのかもしれない。それが酒を断つことによって、ここまで変わるとは……。それと、僕は本気で自分がアルコール依存症だと思っていた。でも、飲まなくても何もなかったということは、どうやらその段階まで行っていなかったらしい。そのことにも安堵した。
 酒を飲むと気持ちよくなれるし、酒の場で色々な人と交流し、話す時間は何より楽しい。でも、これからは定期的に休肝日を作ることにします。皆さんも飲み過ぎには気をつけて!

 
 
 
-ヒビレポ 2013年8月27日号-

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