ヒビムシ 第11回


菊水山:クロカタビロオサムシ

沢田佳久
(第11号で「五十円玉はどこだ」執筆)
 
 
 

8月21日(水)
 日程の都合で変則的な第11回である.以前,第6回でオサムシに言及したので,その関係の写真が撮れた日に遡って書くことにした.「8月21日に6月11日(火)のことを書いている」という状況です.これが読まれるのは9月半ばであるから,約3ヶ月前の菊水山である.

 オサムシ類は,多くが後翅が退化しているため地理的な分化が激しい甲虫で,地上徘徊性の大型捕食者〜死肉食者として繁栄している.黒く大きい体に微細な彫刻が施され,鮮やかな金属光沢をまとうので,昔から虫好きには人気の高いグループである.
 オサムシ類を含むゴミムシ類を,ドイツ語では”ラウフ・ケーファー”というらしい.走る甲虫である.日本でも「歩行虫」という表記が以前はよく使われた.たとえば今で言う「ゴミムシ科」や「オサムシ科」は漢字で書くと「歩行虫科」であった.当時は「ホコウチュウ科」と音読することも少なくなかったが,戦後「ゴミムシ科」と書かれるようになると,そう読まざるを得ない.古くからの歩行虫屋さんたちは不満そうだった.
 

 

 さて,菊水山でも数種のオサムシを見ることができ,色味のあるものは簡単に見分けられる.赤銅色のマヤサンオサムシ,緑がかったヤコンオサムシ,青い輝きのオオオサムシ,これらはよく似た姿なのにサイズが違い(小,中,大の順),金属光沢の色調が違う.シリーズっぽくて楽しい.見かければ集めたくなるのが当然だと思う.
 ただ,この整然さは狭い視野でのことで,広くみると複雑な状況になっている.六甲山付近での見分け方は他の地域では通用しない.そこでは別の組み合わせになっていて,常連さんには簡単に見分けられるのだ.

 

マヤサンオサムシ(上下とも立体写真。見方は文末に)

 

 菊水山で一番小さなマヤサンの,名前は六甲山の「摩耶山」に因むものである.ご当地の虫ということになる.背面全体に赤銅色の輝きがある.この日は落ち葉がカサコソいうので見てみると,マヤサンがラウフェンしていた.驚かすと立ち止まることがあり,そうして偶々撮れた一枚がこれ.
 中型のヤコンは側溝の壁面で餌をくわえて立ち止まっているところを見つけた.翅(翅鞘)の縁に緑色輝きがある.これより一回り大きくて平たい感じでルリ色のオオオサがいるのだが,この日は撮影できなかった.

 

ヤコンオサムシ

 

 このヤコンが持っている獲物は蛾の幼虫のようだ.じつは昨年から菊水山は毛虫だらけでやんす.さまざまな植物の葉を食べるマイマイガの類が多く,木によっては丸坊主にされている.
 毛虫や芋虫が増えるとそれを食べる虫も増え,やがて減少に転じるわけだが,病気が流行ることもある.ウイルス病にかかると体の中身が溶けてしまい,外側だけが袋状に形を保った状態で,木に貼りついたまま残る.遠目には,毛並みの乱れた毛虫がぐったりして止まっている,ように見える.そんな死骸を今年はたくさん見かけた.
 落下した半死の毛虫もそれぞれ捕食されるので,オサムシ類の餌になっている.ヤコンの獲物もそういう個体だろうと思われる.

 

クロカタビロオサムシ

 

 オサムシ類の中でも特にクロカタビロオサムシは蛾の幼虫を好んで捕食することで知られている.「カタビロ」の名のとおり飛べるオサムシである.平年はレアな種類なのだが毛虫がふえるとこの虫も増えるのだという.実際,菊水山では昨年からクロカタビロがよく見られるようになり,この日も何匹か見かけた.彼らにとっては数年に一度の書き入れ時なのだろう.少なくとも今年はド普通種である.

 最初のほうに「鮮やかな金属光沢をまとう」と書いたが,図示したように,必ずしもそうではない.というか,日本産に限れば「〜ものもある」くらいである.だが大陸産のものは本当に鮮やかなものがいる《ので,ぜひググってみてください「〜カブリモドキ」などの和名がついています》.

 

センチコガネ

 

 飛ばない昆虫がらみで言及していたセンチコガネも,この日,撮った.菊水山のものは飛ぶ.シカの多い山ではオオセンチコガネが増えているが,このあたりではセンチコガネである.犬の糞はセンチなのだ.散歩のマナーが適度にまもられているお陰だと思う.適度というのは,ルーズすぎず,厳格すぎず,という意味である.
 
 

◆立体写真の見方◆

同じような2コマが左右に並んだものは「裸眼立体視平行法」用の写真です.
平行な視線で右の目で右のコマ,左の目で左のコマを見ると,画面奥に立体世界が見えてきます.
大きく表示しすぎると立体視は不可能になります.

色がズレたような1コマのものは「アナグリフ」です.
青赤の立体メガネでご覧ください.
メガネは右目が青,左目が赤です.
緑と赤の暗記用シート等でも代用できます.

別サイト「ヒビムシ Archives for 3DS」にはMPO版を置いています.3DSの『ウェブブラウザ』で「ヒビムシ Archives for 3DS」のサイトを参照してください.お好みの画像を(下画面におき)タッチペンで長押しすると,上画面に3Dで表示されます(数秒かかるかも).表示された3D画像ファイルは保存することもでき,『3DSカメラ』でいつでも再生することができます.

MPO版とは,複数の静止画を一つのファイルにまとめたもので,ここでは立体写真の左右像を一つにまとめたファイルです.3DSをはじめ,多くのmpo対応機器で3Dとして再生,表示することができます.PCやスマホ等でダウンロードできますので,各機器にコピーして再生してみてください.
 
 
 
 
 
-ヒビレポ 2013年9月15日号-

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