新宿ゴールデン街を飲み尽くせ! 第10回


 
コエヌマカズユキ
(第11号で「物書きにとってバー経営はメリットになるのか?」執筆)
 
 

 先週ゴールデン街で行われた「納涼感謝祭」は、参加店約150店舗であれば、ノーチャージ・ワンドリンク500円で飲むことができるイベントである。チャージが高いお店や、普段は入りづらいお店も、この日なら明朗会計で飲むことができる。スタンプラリーもあり、新規開拓にはうってつけの日だったのだが、僕は重度の二日酔いのため、この日に一軒も回ることができなかった。ゲームで言うと、ボーナスステージなのに、何も得られなかったようなものだ。そんな取りこぼしや、本業が多忙なのもあって、元々は新規開拓がテーマだったこの連載、このままでは行きつけの店を飲み歩く日記のまま終わってしまう! 連載が終盤に差し掛かった今、全店制覇は難しいが、ラストスパートで新規開拓に臨むことにしよう。そう決意したところで、今週の飲み歩き日記です。
 

 

<今週の酒>
◆8月26日(月)
 お祭りの翌日のせいか、ゴールデン街に人は少ない。昨日の賑わいがウソのように静かな夜だった。なかなかお客さんが訪れず、アルバイトの丹羽さんが「人いないですねぇ」と、外の様子を見ようとドアを開けた瞬間、「わー!」と悲鳴を上げた。泥酔した中年男が、鼻水とヨダレを垂らしながら、丹羽さんに抱きつこうとしてきたらしい。慌ててお店の中に逃げ帰る丹羽さん。中年男はゾンビのような足取りで、そのままどこかへ行ってしまった。人のふり見てわがふり直せ。飲み過ぎには注意しようと改めて思った。
 夜が更けて雨が降りだし、客足はさらに少なくなるかと思われたが、若者たちが立て続けに来店し、本の話で盛り上がる。最近「文壇バーなのに、本の話してるの見たことない」と言われることがしばしばだが、こんな夜もちゃんとあるのだ。

※お店にてビール×1本、レッドアイ×1杯
 
 
◆8月27日(火)
 原稿書きの仕事がどうしても終わらず、この日はやむを得ず臨時休業にすることに。物書きが本業とはいえ、お店をおろそかにしてしまうのは、やはり反省である。実際に、お休みということを知らずに来てくださった方が何人かいたようで、残念な思いをさせてしまった。アルバイトさんをもう1〜2人くらい雇えば問題ないのだが、人件費がばかにならないので、そう簡単にはいかない。今後、物書きとお店を両立し、長く続けていくための課題である。

※休肝日
 
 
◆8月28日(水)
 原稿を何とか書き終え、仮眠してそのまま朝から取材、そして午後は夕方までみっちり打ち合わせ。へとへとになってお店へ向かう。そういえば一日何も食べておらず、おなかが減っていたので、お店を開ける前に歌舞伎町のホルモン屋「モッツマン」へ。新鮮なホルモンを安い値段で食べることができ、しかも朝までやっているこのお店は、歌舞伎町の住人の御用達である。遅い時間に行くと、水商売風の人たちがたくさんいて、何だかお店の休憩室にいるような気分になる。愛すべきお店だ。

1軒目 モッツマン
ビール×1杯、ハイボール×1杯
モツの串焼き盛り合わせ、ブレイン(豚の脳みそ)刺し、モツ煮込み、ポテトサラダ
¥3200

※自分のお店にて
ハイボール×1杯、ウイスキーロック×1杯
 
 
◆8月29日(木)
 この日は昼から取材で、オリエント工業というダッチワイフメーカーのショールームを見学に行った。ずらりと並ぶ人形たちに圧倒される。取材後はショールームがある上野の街をしばしブラブラ。そういえば上野をゆっくり散策するのは、中学生の遠足のとき以来かもしれなかった。アメ横を歩き回って、お店のお通し用にクジラのベーコンを購入。平日の昼間なのにすごく活気がある街だった。上野も魅力的だなぁ。今度昼から飲んだくれてみよう。
 夕方、新宿エリアのタウン誌「JG」さんの取材を受ける。記事が楽しみだ。ちなみに僕は、JGならぬJD(女子大生)好きとお店で言われている。まぁ否定はしないが。夜はお客様に誘われて近くの焼肉屋へ。

※自分のお店にて
ビール×1本、ウイスキーロック×1杯

1軒目 ブラックホール(焼肉屋)
ビール×1杯、肉をたくさん
¥6000(3人で行き、割り勘)
 
 
◆8月30日(金)
 週明けに出す原稿がたまっているので、日中はひたすら原稿書き。まだまだ進めておきたいところだったが、夕方になったのでお店へ向かう。いつもはお客様が多い金曜日だが、この日は低空飛行。ポツポツと入っては帰り、入っては帰りの繰り返しだった。水商売というだけに、本当にお客様の流れは読めない。開店してから1年2カ月が経ち、常連客もそこそこ付いたが、それでも客足が少ない日は不安になってしまう。特に周囲の繁盛しているお店を見ると、取り残された感を覚える。この日は低空飛行ながらも、結果的にそこそこ来ていただいたので安心だったが、今後も不安は常に付きまとうのだろうなぁ。もっとも、フリーランスの物書きも同じではあるのだが。

※テキーラ×2杯
 
 
◆8月31日(土)
 週末らしく賑わった夜だった。お客さんにお酒をいただいて上機嫌だったが、閉店間際になるとスタミナが切れてくる。お客様たちの会話の輪からそっと抜け、アイスピックで冷凍庫の霜を取っていると、突如「プシュー!!!」という音が鳴り響いて、ガスが噴射し始めた。冷蔵庫の本体をアイスピックで突いてしまったのだ。接着剤で穴をふさぐが、時すでに遅し。ガスは漏れ続け、冷蔵庫は悪臭を放つだけのただの塊となった。やれやれ、また余計な出費が……。

※お店にて
ハイボール×1杯、テキーラ×3杯、ジン×1杯、ズブロッカ×1杯
 
 
◆9月1日(日)
 アルバイトさんにお店を任せて、自宅で原稿書き。一段落ついたところで、お店が主催の文学賞「第一回 月に吠える文学賞」の応募作品を整理する。昨日が締め切り日だったため、続々と応募原稿がメールフォルダに届いていた。集計すると、何と110通近くの応募が集まっていた。当初、応募数はその半分程度だと予想していたので、はるかに上回ったことになる。こんな小さなお店が主催する賞に、こんなにたくさんの方が魂のこもった原稿を送ってくれるなんて、感無量である。ちなみに規定の量は、400字詰め原稿用紙換算100〜300枚という中〜長編だ。下読みは僕が担当するのだが、仕事をこなしながらこの量をこなすなんて、できるのだろうか。それと、締め切り時間を2分過ぎて送られてきた原稿は、審査対象にすべきか、問答無用で弾くべきか……悩むところである。
 ところで以前、レポTVで、「月に吠える文学賞」の存在を萩原朔太郎の関係者が知ったら、怒られるだろう、みたいなトークがあった。確かに、ご遺族たちに謝罪の行脚をする必要はあるだろうなぁ。そこから何か出来事が生まれるかもしれないし。

※自宅にて白ワインボトル半分
 
 
 
 冒頭に書いた通り、新規開拓がテーマだったが、情けないことにブレまくっている。でも、ゴールデン街に行きたいお店は山ほどあるのだ。僕の大好きな(?)テキーラを豊富にそろえているお店、プロレスラーが働いているというお店、清志郎がいつも流れている店、音楽を楽しめるお店、美味しい焼き鳥を食べられるお店など、挙げるときりがない。時間もお金もあまりないが、それでもこの連載中に、せめて行きたいと思っていた店はぜひ回ろうと思う。季節外れの一人納涼祭、一人スタンプラリーの始まりだ!!

 
 
 
-ヒビレポ 2013年9月10日号-

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