ヒビムシ 第12回


アンカラファントシカ:未同定のチョウ

沢田佳久
(第11号で「五十円玉はどこだ」執筆)
 
 
 

9月5日(木)
 マダガスカルへ行ってきた.あまり採集はできなかったが,かなり撮影した.収集物件もいくつかある.これらの整理に何日もかかっている.失敗作の山と行動記録を前に,旅行の記憶をなぞりながら時々の感情を反芻している段階.
 書くべきことは,いっぱいある.ありすぎる.思いつくまま挙げていくと;

○地形の力強さ
○固有の生態系
○絶滅先進地域
○東洋とアフリカの混交の妙
○人口構成と街の風景
○街のいろいろ
○人のいろいろ
○マダガスカルへ行った理由
○安易な計画
○採集ツアーというもの
○チョウ屋と雑虫採集
○目的達成の瞬間
○珍道中的なこと

…と,きりがない.互いに微妙に関連していて,一つを取上げて書くのも難しい.熟成中の部分もある.ここはヒビレポのヒビムシなので,とりあえず日々って8月29日の事を書くことにします《状況説明を省略しつつ記述不足部分は推測してもらうという戦術です》.
 

 

 8月29日,この日はアンカラファントシカの保護林での三日目,ここでの最終日であった.筆者だけ林内を徘徊することにした.この林が国立公園なのか,公園の特別な保護地域なのか,保護林なのか,そもそもどのような規定があるのか理解していないのだが,とにかく昆虫等の採集は禁止されているようだ.
 宿舎は林内にある.あくまでも採集が目的の他のメンバーはバスに乗り,区域外の採集適地に出動していった.この辺りの採集で第一の目的は「アンテノール」というジャコウアゲハの類い,かなり立派なアゲハチョウである.筆者も二日間は同行したのだが,その間に数匹採れただけで,メンバー全員に行き渡ってなかった.ついでに他のチョウも採集するので全くのボウズというわけではないだろうが,まだの方にとっては最後のチャンスである.
 筆者はこの種には思い入れがなかったので数回目撃して満足していた.撮影も採集も無理そうなのでこの種にこだわるべきではない.なのでこの日は林内に残って観察と撮影に当てることにした.

 なにしろ林の内外では環境が違いすぎる.区域の境界は明示されていないが,明らかに違う.外側はとことん開発されて,潅木が点在するていどの荒涼とした風景が広がっている.雨季には緑の草原になるのだろうが,伐採や焼畑のため元来の森は消滅している.それに対して保護林内には比較的大きな湖水を中心に背の高い木々が残っている.もちろん手つかずの自然というわけではなく,水田耕作や牧畜も調和的な程度で行われているようだ.残された森林の貴重さに気づいてとりあえず現状を固定した感じに思える.

 マダガスカルといえばバオバブやキツネザルなど,固有の生物を擁する独特の生物相を持つことで知られている.だから自然の島のように思えてしまう.しかしそれは全くの見当違いである.”象鳥”エピオルニスに代表される「絶滅先進地域」なのである.一般にみかける植物も大部分は(アフリカ大陸からのものを含め)外来種である.
 島に発達した独特の生態系は,人類の入植や外来生物の蔓延によって大きく損なわれている.歴史上の早い時期に破壊がすすみ,元来の自然はごく限られた地域に断片的に残されているだけ,それがマダガスカルなのだ.
 人類はこの地から何を学ぶべきか? 隔離された生態系で発達した特異な生物相を知ることはできるだろう,しかしそれは残骸でしかないことを認識した上でであるべきだ.自然破壊の残骸として精査すべきなのだ.それによって往時の自然を推定できるとともに破壊の過程を認識し,反省できるからである.て,十日ほど行っただけでそこまで言うか?

 筆者は赤道を越えたのも初めてである.行った事のないアフリカなどでは多いという「ホソチョウ科」なるもの(の生きて飛んでるやつ)とも初遭遇であった.林内にも何種かいるようで,この日もよく出会った.チョウの分類学的研究は進んでいるので,よほどのことがないかぎり学名がついている,それどころかマダガスカル産の種でも和名が付いているのも多い.これも「マダガスカルベニホソ…」と呼ばれているやつのように思えるが断定するだけの資料がない.
 
 

ホソチョウの一種(上下とも立体写真。見方は文末に)

 

 
 問題のアンテノールは上空を通過したのを一回見ただけだった.ただ食草があったので探してみると脱皮中の幼虫を見ることができた.貴重な観察だったが見栄えがオゾマシイので図示は自重.
 チョウの写真を撮れ撮れ未同定のまま掲載しておこう.湖面はホテイアオイ(外来種)に覆われており,岸に砂溜りがあり,少し花も咲いていた.そこで待っていると吸蜜や吸水に来るチョウを何種か撮影できた.派手目のタイマイの二種で,キルヌスとエボンバーというやつかなと思っている.
 あとシジミチョウの一種.以前紹介したアカシジミとほぼ同じ構図で,やはり偽の頭になっている.
 
 
 

タイマイの一種

 
 
 

オナガタイマイの一種

 
 
 

シジミチョウの一種

 
 

 
 
 
 
◆立体写真の見方◆

同じような2コマが左右に並んだものは「裸眼立体視平行法」用の写真です.
平行な視線で右の目で右のコマ,左の目で左のコマを見ると,画面奥に立体世界が見えてきます.
大きく表示しすぎると立体視は不可能になります.

色がズレたような1コマのものは「アナグリフ」です.
青赤の立体メガネでご覧ください.
メガネは右目が青,左目が赤です.
緑と赤の暗記用シート等でも代用できます.

別サイト「ヒビムシ Archives for 3DS」にはMPO版を置いています.3DSの『ウェブブラウザ』で「ヒビムシ Archives for 3DS」のサイトを参照してください.お好みの画像を(下画面におき)タッチペンで長押しすると,上画面に3Dで表示されます(数秒かかるかも).表示された3D画像ファイルは保存することもでき,『3DSカメラ』でいつでも再生することができます.

MPO版とは,複数の静止画を一つのファイルにまとめたもので,ここでは立体写真の左右像を一つにまとめたファイルです.3DSをはじめ,多くのmpo対応機器で3Dとして再生,表示することができます.PCやスマホ等でダウンロードできますので,各機器にコピーして再生してみてください.
 
 
 
 
 
-ヒビレポ 2013年9月22日号-

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