新宿ゴールデン街を飲み尽くせ! 最終回


 
コエヌマカズユキ
(第11号で「物書きにとってバー経営はメリットになるのか?」執筆)
 
 

 あっという間に最終回である。3ヶ月間、自分の酒の飲み方を記録することで、反省したり、自己嫌悪したりと、見えてきたことが色々あった。仕事や私生活の色々な出来事によって、酒量や飲み方が変わることも改めて実感した。ものすごく腹が立つことがあった日は、ウイスキーを飲みながらチェイサーにビール、締めにテキーラと無茶な飲み方をしたものだった。人の顔には精神状態がにじみ出ているというが、それと同じで飲み方にも表れるのだ。
 さて、今回の連載は新規開拓をテーマにしたが、思ったより開拓はできなかった。。。これには反省しきりなのだが、一つだけ言い訳をさせていただけるのなら、僕の行きつけのお店は本当に魅力的だということである。ゴールデン街やその周辺で飲み歩く中で、良いお店を何軒か見つけてしまうと、あえて新規開拓をする気にならなくなってくる。自分のお店が終わった後、ついふらりと行きたくなるのは、行き慣れた素敵なお店たちなのだ。そこに行けば、馴染みの店員やお客さんがいて、飲みなれたお酒や雰囲気を楽しみながら、極上の時間を味わえる。この魔力には本当に抗いがたい。
 しかし、今回の連載の中で開拓した新しいお店の中にも、何軒も素敵なお店があった。今後、何度もリピートするだろうお店もあった。慣れたお店に行くのもいいが、新規開拓をして、新しい出会いを探すのもやっぱり楽しい。連載は終わっても、今後も積極的に新規開拓をしていこうと思う。というわけで、今週の酒です。今回が最終回なので、頑張って新規開拓をしてきました。
 

 

<今週の酒>
◆9月19日(月)
 お店の看板娘・丹羽さんがこの日から9月いっぱいお休みすることになった。10ヶ月も働いてもらっているので、毎週月曜日はすっかり丹羽さんの日として定着しており、彼女の手料理を期待して来るファンも多い。月曜日に一人で店に立つのは久しぶりで、少々緊張。丹羽さん目当てで来てくれた人がいたとして、僕しかいないのは申し訳ないな、と自分の店なのに恐縮してしまう。主役を喰ってしまうオーラを持っている人とは、こういう人のことを言うのだろう。
 閉店後、久しぶりに新規開拓の旅へ。前から気になっていたお店へ入ったが、どうも思い描いていたイメージと違う。まさかと思って店名を聞いてみると、違うお店だった。小さなお店がぎっしり立ち並んでいるゴールデン街である。入り口を間違えて、隣のお店に入ってしまったのだった。ヒゲが似合うマスターに、涼しい顔で「何となく気になったので入ってみました」と告げ、グラスを傾ける。とはいえ、落ち着ける雰囲気で値段も安く、いいお店でした。  

1軒目 アパッシュ(新規)
ビール×1杯、ウイスキーソーダ×1杯
¥2,000

 

◆9月10日(火)
 今週は珍しく、取材が一件も入っていない。ただし、執筆や編集をしなければならない原稿は山のようにあり、昼間はほぼ家にこもりっきりでパソコンに向かう週だ。夜、お店が終わった後に新規開拓。初めてのお店に入ると、見慣れた顔のマスターが出迎えてくれた。ゴールデン街の、僕の店のすぐそばでマスターをしていた人だ。なぜ彼がここに? と一瞬頭に?が浮かんだが、すぐに思い出した。少し前、自分のお店を閉めることになったと、彼がごあいさつにいらした際に、「しばらくは○○というお店で働かせてもらいます」とおっしゃられていた。僕はその店名をすっかり忘れており、偶然入ったお店が、該当のお店だったのだ。ここでも何食わぬ顔で「こちらで働いているとのことで、顔出しました」とあいさつし、グラスを傾けたのだった。

1軒目 Decoy(新規)
ウイスキーソーダ×2杯
¥3,800

2軒目
あかはる(イタリアンレストラン)
白ワイン×2杯、カルボナーラ
¥???忘れました
 

◆9月11日(水)
 アルバイトのO橋さんがいる日なので、19時の開店時間が過ぎても原稿を進め、20時30分頃にお店に向かう。するとお客様は誰もおらず、O橋さんもやる気がない様子で客席に座り、雑誌を読んでいた。こんな態度でお客様が来るわけはない。ため息をつき、少々苦言を呈してからカウンターに立った。アルバイトがいる日は、僕はさくらを兼ねてカウンターに座っていることが多いが、働きぶりをたまには見せないとダメみたいだ。開けっ放しのドアから、外を通る人に声をかけて呼び込み。また、遅い時間からお客様がポツポツ来て下さり、結局何とか平常通りの売り上げになった。先が見えない水商売とは、いつでもハラハラするものです。
 閉店後、これまた気になっていた「デスマッチ」というお店に行ってみる。デスマッチ好きの僕としては、行かないわけにいかない。気さくそうなマスターが出迎えてくれた。話してみると、予想とは異なり、お店のコンセプトは「ホラー映画」なのだそう。それでも、かつてプロレスバーとして営業していた時期があったそうで、熱いプロレストークで盛り上がった。

1軒目 地獄のデスマッチ(新規)
ビール×1本、ウイスキーソーダ×1杯
※マスターに一杯
¥2500

2軒目 モッツマン
ホッピー×2杯
モツ串焼き、冷奴、レバテキ
¥2000くらい
 

◆9月12日(木)
 アルバイトのインディさんにお店を任せて、原稿書きのため早めに帰宅。彼はゴールデン街のほかのお店でもバーテンダーをしているため、お店を回すのはすっかり慣れたもので、安心して任せられるのだ。最近、アルバイト希望の人が増えており、今後のシフトの相談などもする。うまく調整がつきそうだ。さらに面白いお店にしていくぞ!

※自宅にてビール×1本、ハイボール×4杯
 

◆9月13日(金)
 この日は新アルバイト候補・ニシイさんが、仕事体験のためお店に入ってくれた。普段はネイリストをしている女性だ。元々、知人が連れてきたお客様だったのだが、すぐにゴールデン街の雰囲気を気に入ったようで、働いてみたいと興味津々に口にしていた。とてもコミュニケーション能力の高い方なので、こちらこそぜひ、とオファーを出して、今回の運びになったのだ。ニシイさんは少々緊張しながらも、お客様との会話を終始楽しんでいた様子。「ほかのお店で飲んでるから、お店が終わったら来なよ」とおじ様に口説かれる(?)オマケはついたものの、平和に一日が終わった。
 その後、僕はお客様と飲み歩き。前から気になっていたお店に行ったのだが、やたらテンションの高い女性店員にため口で出迎えられ、馴れ馴れしい接客をされて、そういうのが苦手な僕はたちまち沈黙。僕が誘ったのだからと、連れの分も出したのだが、思ったより高くてすっかり疲弊してしまった。

1軒目 某店(新規)
ビール×2杯、テキーラ×2杯
¥6,400(2人分)

2軒目 ヅメバー
コーヒーリキュール×2杯
¥??忘れました
 

◆9月14日(土)
 お昼過ぎに外出して野暮用を済ませる。その後、夕方に新宿で人と会う約束があったが、一時間ほどぽっかり時間が空いてしまった。喫茶店にでも行こうと思ったが、週末の新宿である。どこも混雑しているため、思い出横丁へいくことにした。お気に入りのお店と、初めて行くお店をハシゴして、ほろ酔いに。ゴールデン街も魅力的だが、思いて横丁も楽しい場所である。多くのお店が朝や昼から空いているため、明るいうちから酒が飲めるのも素晴らしい。もっと開拓したいな。
 夜、自分のお店はというと、終始お客様が絶えない週末らしい日だった。次々とお酒が注文され、嬉しい悲鳴を上げるが、この日は全体的にお客様の酔いっぷりもすごかった。あちこちで「パリン!」とグラスの割れる音が聞こえ、この日だけで3つのグラスが割れてしまった。しきりに謝られたが、バカラのグラスを使っているわけでないし、問題ないですよ! そういえば、前にバイトをしていたN岸は、グラスを割ったときに謝りもせず「このグラスはたくさんあるやつだから割っても大丈夫」としれっと言ってのけた、筋金入りのへそ曲がりだ。
 
1軒目 カブト(思い出横丁)
ウナギの串焼一通り、ビール×大瓶1本
¥2200くらい

2軒目 つるかめ食堂(思い出横丁)
ハイボール×2杯
ソイ丼(大豆のカレー炒めを乗せた丼)の頭(具材)、牛すじ
¥2000くらい

※お店にて
テキーラ×2杯、ハイボール×1杯
 

◆9月15日(日)
 この日はアルバイトのO橋さんにお店を任せて、六本木バルタウンというイベントにお客様と参加。3500円のチケットを買えば、参加店の約20店舗の中から5軒回ることができ、各店で1ドリンク&フードメニューを楽しめるという、かなりお得なイベントだ。だが、朝起きるとものすごい雨が降っていた。台風が近づいているのだ。びしょびしょになりながら雨の中を回るのは辛いと危惧していたが、幸い午後には晴れてきたので、安堵しながら六本木へ向かった。カリフォルニア&メキシコレストラン、名古屋料理、カフェ、沖縄料理、炭火BARとジャンルが異なる5店舗を回り、各店で料理やお酒を堪能した。六本木で飲んだことはあまりないので、とても新鮮だった。原稿の締め切りは結構あるが、翌日にまとめて片づけることにする。仕事のことを忘れて、ゆっくりする日も必要だ。
 
※色々なお酒×7杯と、各店で色々な食べ物
¥3,500+別料金で注文した分が¥3,000くらい
 

 お店は人で決まるというが、まさにその通りだと思う。素敵な人がいるから、行きつけのお店に行く。素敵な人に出会いたいから、新しいお店を巡る。きっと皆そうだろう。僕のお店でアルバイトをしてくれている方たちも、お金がどうこうではなく、いろいろな人に出会って話をできることが何より楽しい、と働く意義について口を揃える。僕が全財産を費やしてお店を開くことにしたのも、全く同じ理由からだ。お店で様々な人と出会うことは、物書きとしての自分を必ず高めてくれるだろうし、何より毎日を刺激的に変えてくれる。2足のわらじは、30代の身体には少々キツいときもあるのだが、お店を開いて本当に良かったと思っている。
 この連載を通して、ゴールデン街の魅力が少しでも伝われば何よりだと思っている。まだ来たことが無い方は、ぜひ一度足を運んでいただきたい。人見知りの方も、酒癖が悪い方も大歓迎ですよ!!
 
 
 
-ヒビレポ 2013年9月24日号-

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