展示される生きものたち 第1回


クラゲの王国・加茂水族館

 
日高トモキチ(生きものなんとか紀行連載中)
 
 

 
 

動物園や水族館といった生きもの展示施設はレポ本誌でもたびたび取り上げて来ました。
で、振り返ってみると日本全国ずいぶんあちこち経巡って来たもので、今回とくにそれらを改めて独立したよみものとして書かせて頂こうかな、という色気が出た次第。
すでに本誌で紹介済みのものもいくつかありますが、っていうか第1回からアレだよこれレポ5号のクラゲラーメンの回に出てきた水族館だよね。
ええそうです。山形県鶴岡市立加茂水族館。
公式サイトはこちら。 http://kamo-kurage.jp/
トップページに出てる画像が見覚えのない建物なので「リニューアル済んだのかな?」と思ったら普通にアフター予想図だった(来年完成予定)。
現点では、うそである。こんな施設じゃないので皆さん信じないように。

 
ほんとうの加茂水族館(2011年6月)
 

 

世の中には一芸入試という制度がある。
総合的な成績はどうあれ、なにかひとつ人より秀でた部分があれば評価してやろうという上から目線のシステムだ。まあ入試だからしょうがないけど。
加茂水族館というのはつまり一芸に特化した施設なのである。曰く「世界一のクラゲ水族館」。
そのへんの経緯をWikipedeia先生にざっくり説明していただこう。

>(前略)近年は入館者数も激減し閉館の危機に直面したが、1999年(平成11年)頃から本格的にクラゲの展示を始めたところ好評となり、入館者数も増加に転じた。
>その後飼育数、展示数を増やして「クラネタリウム」として専用展示室化した後の2005年(平成17年)に展示数世界一となった。

ついでに閉館の危機に直面していた1997年の出来事も引用しよう。

>1997年(平成9年) サンゴの水槽で偶然クラゲが発生し、クラゲ展示が始まる。 当年度の入館者数が過去最低の9万人となる。

うん。クラゲ展示のはじまりは偶然やってん。でもその後8年で世界一になって経営も持ち直してんねん。
瓢箪から駒とはこのことだ。駒ってそんないいものかどうか知らんけど。

 
クラゲいろいろ
 

ちなみに20世紀には日本でクラゲの水族館といえば神奈川県の江ノ島水族館であった。
2004年にリニューアルして新えのすいになってからはクラゲ類は展示の一部になっちゃいましたけどね。

確かにクラゲをメインにしたところで一般のお客は呼べまいというのはごく常識的な判断だろうと思う。
かわいいラッコとかかしこいイルカとかきれいなお魚とか、水族館に来る皆さんはそういうのがお好きだよね普通に考えて。
目も鼻も口もないしどれが尻やら頭やら、脳みそも見当たらないものがプカプカ浮いてて果たしてなんか楽しいか?

 
続・クラゲいろいろ
 

いや楽しいよこれ。.

好奇心というものが正しく「奇を好む心」だとすると、これほど奇な生物もなかなかいるものではない。
身体の99%が水だとか水流が強いと砕け散ってしまうとか、あげくの果ては永久に死なないとか。
(これについては説明すると長くなるので『ベニクラゲ 不老不死』で検索して頂きたい)
遠足のこどもたちも口をあんぐり開けてこれらの何を考えているかわからない生命体に見入っていた。
クラゲに詳しくない人でもきっとクラゲが好きになる、そんな素敵な空間だ。

なにごとも、極めれば道。

クラゲ芸を極めた加茂水族館としては、だから当然クラゲレストランである。
海鮮の旨味たっぷりのクラゲラーメンは相当おいしいが、クラゲみじん入りのクラゲウインナーコーヒーは単なる異物混入物件だ。

 
クラゲラーメン・クラゲウインナーコーヒー・クラゲデザート
 

ざるそばやカレー等のノーマルなメニューも各種取り揃えられているので、食に対して特にネタを求めない貴方でも安心です。

クラゲばかりを話題にしてきたが、クラゲ館ではなく水族館を名乗る以上は他の水生生物もひと通り展示されている。
決して派手ではないものの、スタッフの生きものに対する愛情が随所に感じられてたいへん好ましい。
この地に足の着いた感じがリニューアル後も存続してくれることを切に望みます。

 
非クラゲ展示いろいろ
 

あと何と言ってもロケーション。
目の前の澄んだ日本海で採れるクラゲを展示できる環境は、都会のデートスポットを気取ったアクアリウムには真似のできない素晴らしい地の利。
ぜひもう一度訪ねたい水族館のひとつです。

 
日本海に沈む夕陽
 

リニューアル、いい感じになるといいな。
 
 
 
-ヒビレポ 2013年10月5日号-

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