散歩がてらに部屋を探す 第2回

新高円寺編 ~魅惑のピッカピカバス~

 
半澤則吉
 
 

 
 

国破れて山河あり、とは誰の言葉だったろうか。忘れた。間違った使い方かも知れないがこの写真を眺めていると自然、そんな言葉が浮かぶ。(山も河もないが)
 

 
これはなんと隣家だ。正確には隣家跡地。都心とは思えない荒涼感が漂っている。「ボロアパート」で画像検索したらすぐひっかかってしまいそうなクラシカルなアパートが建っていたのだけど、昨年の11月半焼。今年2月に大げさな音と共に更地になってからは草花(主に草)の楽園へと変貌を遂げた。僕は幸い火事の時には部屋にいなくて、ほろ酔いで帰宅した折なんか焦げ臭いな、と思ったもののそのまま寝てしまった。ことの重大さを知ったのは翌日。隣家の2階内部のほとんどが露になり、木塊と真っ黒い残骸が山積みになっていた。急いで同じアパートに住むOさんの部屋のインターホンを押す。Oさんは近隣事情にやたら詳しいおばさまで、当然隣家の大火事も間近で見ており、興奮冷めやらぬ感じで詳細を話してくれた。
「風向き逆で助かったわよ。というか、半澤さんいなくて良かった。あれ見たらちょっとしたショックよ。うちのアパートは幸いホースの水かかったくらいだったから本当良かった」
 

 
彼女が話を誇張していないのなら、宅もかなり危険にさらされていたことになる。白い壁には大仰な放水跡が残り、どういうわけかしばらくの間消えなかった。いやあ、本当に被害がなくてよかったのだけど、冒頭ご覧いただいた大自然が示すように、隣は今や完全な空き地。それはそれで問題だ。空き地と言っても、ご覧の通り、更地にドラム缶3つが並んでいるような藤子F的な風景ではない。ただの無秩序地帯がそこにある。(Oさんの話では焼失した家の大屋はかなり年配の方らしく、今後の管理がどうなるかすら不透明らしい)雑草が生い茂る前は猫が数匹戯れる姿が見え、微笑ましくも思えたのだが、最近は上空にカラスやらコウモリやらが飛ぶことも多い。エサ的なものが豊富なのでしょうか。いやあ気持ち良いものではない。

こんな、目を背けたくなる現実も、引っ越しの動機でした。言うの忘れてました。あまりに派手過ぎて先回、書きのがしていた。部屋が狭いだのロフト使いづらいなどと言う前に、荒れ地の隣に住むのはもういやだ。薄暮の空を独特の軌道で飛ぶコウモリの群れはちょっと引くよ、ほんと。と、言う訳で第2回の今回も攻め気で物件へ赴く。安くて、広くて、カラスやコウモリが出ない部屋はないものか。今のところ近場で探すならとりあえず前回と同じ不動産屋でいいと思っている。というのは担当していただいたKさんの対応が非情に実直だったし、この辺の物件にさすが詳しかったからだ。それに、自分の希望うんぬんをいちいち不動産屋に伝え理解を得るのは結構面倒だということを知った。特に「安くて広い」、そんなわがままな要望を掲げている場合には。また、年末に近づくにつれ家賃が安くなることもあるのでちょっとでも粘りたい僕に対し、不動産屋的には今日にでも決めて欲しいというのが本心だろう。が、Kさんには「物件を数ヶ月ゆっくり内見したい」、との旨を理解してもらったようなので良かった。で、今回はそのKさんオススメの新高円寺駅の物件へと出かけた。もちろん自転車で。

 
 
物件No.2 新高円寺1DK 1階
 

  ○1DK フローリング8帖 和室6帖
  ○最寄り駅:丸ノ内線新高円寺駅徒歩13分
  ○家賃6万3000円/共益費1000円/敷1礼1

 

前回の物件と数字上は変わらないのに、まず広いと思った。ジメジメ感も、カビくささもない。よく手入れされているみたいだ。角部屋ですぐ隣があからさまな一軒家なのは気になるが、広さに感銘を受ける。
 

 

 
テラスはなかなか広くただの洗濯機置き場ではない。日もたくさん入り間取り以上に広い印象を得た。が、なんと言っても収納がスゴいです、ここは。

 

 

普通は隣室と互い違いに収納を付けるのでこのように一部屋分全面収納はかなり珍しいとのこと。やたらに物が多い僕にとってはかなり魅力的だ。内見2件目にして感動しまくっていたが、もっとテンションの上がる部屋があった。同アパートの違う部屋も最近リフォームしたばかりで内見できるというので見せてもらったら、これはすごかった。こちらは間取り図なしだったので、覚えている範囲で間取りを作成してみた。
 

 
物件No.3 新高円寺1DK 1階
 

  ○1DK 洋DK7帖 洋6帖
  ○最寄り駅:丸ノ内線新高円寺駅徒歩13分 
  ○家賃6万3000円/共益費1000円/敷1礼1 

 

少し狭くなる。が、非情に良い。これは良い。テラスに加え道路側に大きく開けた窓。めちゃめちゃ明るいのだ。夕方、無灯火にも関わらずこの明るさ。
 

 

これは開放感ありますね、とKさん。僕も大きく頷いた。素晴らしい。実際の広さよりも、明るさから生まれる気持ち的な「広さ」も重要だ。ふむふむ、と1人つぶやいていると、背後から声が。
「あ、あとこれ新しいですよ」
管理不動産会社の方が玄関横のバスルームを指差している。そこにはかつて見たことのない光景があった。
 

 

なんとお風呂が新品。ピカピカだ。ピッカピカだ。恥ずかしながらピカピカ風呂を見るのは生まれて初めてだ。新築物件を検討したことなどない僕にとって新品のお風呂とはこれ、ちょっと衝撃的。よほどタイミング良くないと新品風呂の中古賃貸物件にはめぐり合えないだろうなあ。さっきの収納広い部屋もいいし、こちらの新品ピッカピカバスも捨てがたい。本当ならどちらかに決めたいくらいだが、僕はたしか今年大殺界だから年内転居とかなんか怖いしさ… (あと連載も始まったばかりだしさ…)と躊躇う。とは言え、この物件への入居を逡巡したのには一つ大きな理由があった。新高円寺駅徒歩13分との案内だが、実際はもっと遠いのだ。自転車で来たから確かではないが絶対15分はかかるはず。ヘタすれば20分だ。駅から徒歩15分圏内の条件を提示しておきながら、いざ足を運んでみると駅からの距離にビビってしまった。方南町と新高円寺の間だけど、ヘタすれば方南町寄りなのかな。飲酒後、歩いて帰るのはしんどいかも。しかも、環状七号線方面からは自転車で行けないというのもちょっとNGか。物件手前に階段があるのだ。これは酔っぱらって帰ってきた時など大変危険だ。つうか、酔っぱらって自転車乗っちゃダメだよね。と、酩酊時のことばかり想定し、とりあえず今回は保留と相成った。

 
 
【今回のまとめ】
(多分、あったりなかったりになるかと思いますが新コーナー、毎度不動産を探しながら思ったことをまとめます)
「空き物件の状況」も部屋選びの大きな指標になる。これは間取りや立地の次くらいに重要なことだろう。長く放っておかれる物件はやはり良い印象を持てない。「越してきて欲しい」と願う大屋、また「引越して欲しい」と思う不動産屋の意識が高い物件にこそ住む価値があるような気がする。今回の内見でリフォームってスゴいと改めて痛感。ちょっとした改装でこんなに人の心を動かすのだから、全国の大屋はもっと借りる人間に寄り添うべき、ガツガツ金使うべき! と、随分都合の良いことばかりを述べ次回に続く。
 
 
 
-ヒビレポ 2013年10月9日号-

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