小遊三、「LEON」への道①
ボニー・アイドル(第9号で「人生とはトイレからの距離である、のか?」執筆)

「LEON」というファッション雑誌がある。チョイ不良(ワル)親父のバイブルだ。一度も購読したことがないので実際のところはわからないが、誌面は一生ぼくには縁がないアイテムで埋め尽くされていることは想像に難しくない。
余談だけど、司忍6代目山口組組長が5年余の刑期から出所してきた時のファッションが読モと思うぐらい、もろ「LEON」風だった。組長、塀の中で定期購読してたんでしょうか。
で、この洒落臭い、いや、お洒落雑誌の「LEON」。ぼくには縁がないわけだし、違う世界のことだと思ってスルーしてればいいんだけど、一言いいたいことがある。
「なんで小遊三が表紙じゃねえんだ!」と。
「LEON」の雑誌の表紙を毎号飾るのは、おなじみジロー・ラモだ。なるほど、たしかに、13歳で脱童貞を済ませ、「日本には女を泣かせに来た」といけしゃあしゃあと語るイタリアのスケコマシ野郎には、この雑誌の表紙モデルは適任かもしれない。
しかし、皆さん、ジロー・ラモの前に日本を代表するジゴロを忘れていませんかということである。本当に「LEON」がチョイ不良親父のための雑誌なら、表紙のモデルは“水色の伊達男”、三遊亭小遊三こそがふさわしい。
三遊亭小遊三——。
国民的テレビ番組「笑点」でおなじみの落語家だ。大喜利ではトップバッターを務め、日曜夕方という家族団らんタイムに笑いを届ける切り込み隊長である。
風貌も、若干後退気味の額、つやつやと照る血色のいい顔、悪ガキのようなどんぐり眼とお茶の間にふさわしい要素を備えている。
ところがぎっちょん、大喜利における小遊三の回答は、家族団らんをぶち壊すアナーキーなものばかり。
例えば、「二度と参加したくないマラソン大会とは」というお題には、「ゴールで刑事が待っているマラソン大会」と回答。
また、「団体旅行に向かない奴」というお題が出ると真っ先に手を挙げ、「空港で麻薬犬が一目散に駆け寄ってくる奴」と答える始末。
最近ではなかなかお目にかかれないが、「ちょとコレ、分からないアルがね」と国籍不明の外人を演じることもある。
ぼくが小遊三を「LEON」の表紙モデルに推す理由は上記の犯罪者キャラだけではない。忘れちゃいけない彼のもう一つの魅力、色男・ジゴロキャラからの下ネタである。あいさつ含め、全回答を下ネタで通すことも少なくない。
ジゴロというより、主の不在に新妻を狙う米屋といった方がしっくりくるかもしれない。
本人も自分の魅力に気づかれている様子で、似ている芸能人としてアラン・ドロン、木村拓哉、福山雅治、ぺ・ヨンジュンとその時々の旬の俳優の名前を挙げている。
日曜の夕方という、日本中が安心しきってる時間帯に放送するにはフェロモンが多すぎる男、それが小遊三だ。「LEON」の表紙にはまたとない逸材であることが理解していただけただろうか。
という感じで、ぼくの連載では三遊亭小遊三を「LEON」の表紙にすべく、数回にかけて彼の魅力を紹介していきたい。
最後に、9月23日放送の「笑点」大喜利における小遊三の、あいさつ含めた小遊三節全開の回答をどうぞ。
あいさつ「大月の名物に“おつけだんご”というのがあるんでございます。一字間違うとエラいことになるんですが、今度新しく出たのが、“ウコンカレー”。こっちの方が危ねえじゃねえか」
※日曜夕方の番組です
問 歌丸「林家三平師匠の命日にちなんで、師匠の代表的なギャグ“すいません”を頭に付けた五七五の川柳を作ってください」
小遊三「すいません 楽屋の財布 懐に」
小遊三「すいません 私がしました 刑事さん」
問 歌丸「領土問題が大変な話題になっています。そこで、皆さんは様々なものを『オレのものだ、私のものだ』と主張してください。私が『いいや、私のものだ』と言いますので、さらに続けて返してください」
小遊三「このパンツは私のものです」
歌丸「いいや、私のものです」
小遊三「ちょっと待って。(パンツを嗅いで)間違いなくこの匂いは私のものです」
–ヒビレポ 2012年10月2日号–