散歩がてらに部屋を探す 第4回

立川編1 ~モール的な、余りにモール的な~

 
半澤則吉
 
 

 
 

部屋がいっぱい欲しい。これは今回の物件探しにおける目標であると同時に条件だ。「いっぱい」と言っているが最悪2部屋あればいい。恥ずかしながら上京来1ルームにしか住んだことがない僕にとっては2部屋でも「いっぱい」なのだ。今住んでいる家は第1回で紹介したので今回はまず、それまでに住んだ2つの部屋を振り返ってみる。

 

     ○1R4帖半程度
     ○最寄り駅:都営大江戸線落合南長崎駅2分 西武池袋線東長崎7分
     ○家賃:5万1500円/敷1礼1 

 

 

上京した2003年から大学卒業まで住んだ部屋は何と言ってもその狭さがすごい。不動産屋が部屋のドアを開く際に放った「本当狭いっすよ」と言う台詞は今も耳に残っている。4帖半もないのに収納少な過ぎ。天袋だけって信じられない。あまりに狭いのでロフトベッドを購入、一応の居住空間を得たが、狭いことには変わりなかった。しかもエアコンがなかった。夏の夜などどうやって眠っていたのだろう。山手線が自転車圏内だったので、立地は非情に良かったし、よく人に遊びに来てもらったが、冷静に考えると友達を呼ぶ広さじゃない。気になってネットで調べてみたら今は満室、募集がないという。今回ここに引っ越したら個人的には一番面白いと思っていただけに残念だ。

 

○1R9帖半程度
○最寄り駅:西武池袋線東長崎7分 都営大江戸線落合南長崎駅5分
○家賃:3万6500円/敷1礼1 

 
狭い家はもう無理だと引越しを決意したが金がなかった。だから1ルームは変わらず前宅から徒歩数分の物件を選び、車など借りず全て手で運んで引っ越した。安いのはつまり、風呂がないということ。コインシャワーまで徒歩3分だったし銭湯は自転車圏内に4つくらいあったから楽しかった。「風呂なしは一度は経験しておくべきだ」、これは僕の持論だが、4年間はさすがにきつかった。一軒家の1室を借りる昔ながらの賃貸物件はテレビ線もなく屋内アンテナを置いていた。廊下を通りトイレに行くというスタイルは新鮮でよかったけどこの廊下に日が当たらない。部屋を返す際はがっつりカビていたが大屋に気付かれず敷金が少し返ってきてしまい、逆に僕は胸を痛めた。トイレはチェーンを下に引くクラシカルなタイプで、来る人々来る人がリアクションをとってくれた。また、何と言っても喫茶店営む大屋に毎月家賃を払いに行くのが楽しみだった。大屋はラジオ体操のカードよろしく、家賃帳に気持ちよく判を押してくれた。そして、いつもスパゲティを食べさせてくれ(パスタではなくメニュー名は確かスパゲティだった)美味しいコーヒーも淹れてくれた。気付けば常連客のおじさん、おばさんとも仲良くなり東京らしからぬウェットな生活となっていった。何より、道路挟んだ向かい側が酒屋。テレビCM中に酒を買って来れる環境を、最も酒を飲んでいた頃に得られたことは幸せだったのだろうか。引っ越すと言ったら愛想のない酒屋のおじさんも多少しんみりはしてくれた。そう、この部屋での風呂なし生活に限界を感じ「第1回」で書いたように僕はナツキと部屋を探したのだ。

と、昔を振り返ると懐かしさよりも、やるせない感情が生まれる。なんでだろう。一重に1ルームの切ない物件だったせいだろう。10年も1ルームに住むとさすがに頭がおかしくなる。と、ななれば今回は1Kくらいでは終わりたくない。できれば1LDKとか2Kとか言いたい。んじゃ、前回よりさらに西へ進んでみよう。と、言うわけで遠くに足を伸ばした。散歩がてら、と言うか仕事ついでに立川へ。

立川に着いてまず驚く。駅前に不動産屋が多過ぎるのだ。予約していた不動産屋を探すのも一苦労だった。あり余っているのか立川物件? とは言え、立川へ向かう電車の中で僕はかなり億劫になっていた。「遠い…」。そう呟くこと数回。各駅停車に乗ってしまったのは僕の落ち度だが実際問題、遠いわあ。
が、不動産屋に話を聞いたら、あら簡単、僕の心は揺れ動かされた。僕はそれまで立川という土地をただの郊外と認識していた。新宿から遠くなればいくらか家賃安くなんべ、とそれだけの気持ちで来たのだけど、立川すごいことになっていました。なんと来年IKEAができるというじゃないか。しかも再来年はららぽーと。滅多にそういう所、つまり、モール的な、余りにモール的な場所へは行かないくせに、いや行かないからこそ憧れが強いのだろうな。いいな、IKEA。立川、ありじゃん。あっけなく不動産屋の営業トークに乗り、気付けばノリノリでの物件探訪と相成った。

 
 
物件No.9 立川1LDK1階

 

     ○1DK フローリング9帖 洋7.3帖
     ○最寄り駅:JR立川駅徒歩12分 
     ○家賃6万5000円/共益費2000円/敷1礼1 

 
まずは競輪場の近くの物件。僕は競輪はやらないが、この距離感はさすがに誘惑が多かろう、というくらいに近かった。それでなくとも立川には場外馬券上があるのだから、ギャンブル天国じゃないか…。物件は外見が良かった分惜しかった。ちょっとばかり放っとかれた感が強い。

 

が、広いなあ。さすが立川。不動産屋のお兄さんいわく、都心に比べて2万円くらいは変わってくるとのこと。もう一部屋近しい物件を見る。

 
 
物件No.10 立川1LDK2階

 

       ○1DK フローリング10帖 洋6帖
       ○最寄り駅:JR立川駅徒歩12分 
       ○家賃6万2000円/共益費2000円/敷1礼1 

 
先ほどのと比較したら空気も良い。こっちの方が安いのに、俄然いい感じ。広いし、何より目についた

 

 
アコーディオンカーテン。懐かしい。玄関と居間の間、わずかなスペースを埋めようという謎の蛇腹。こう言う意味の分からない仕掛け、発想には心魅かれます。

 

 
2階だし、2面採光。うん、さすがに即決とはいかないがこれ、立川悪くねえな。
え、何だって、まだまだ立川の物件はあるんですって?
つうことで次回も立川編です。末筆ながら僕はIKEAの商品を買ったことが一度もない。
 
 
 
-ヒビレポ 2013年10月23日号-

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