昭和歌謡宅急便 紅白バンザイ特別編 第4回

友人を号泣させたモッくん事件

 
田中稲(11号で「大阪から来た女」執筆)
 
 
 
 

人は誰しも、思い出すだけで
「うああああ勘弁してくれー!」
とのた打ち回りたくなるような失敗や若気の至りを経験しているはず。
あるよねっ、ありますよねっ皆さん、恥ずかしい過去!!(←必死)
私なんざ生まれてこのかた40ン年、全て恥と言っても過言ではないぞ!
そもそも性格的にすんごい自意識過剰なもんだから「んなもん、誰も見てねーって!」というしょーもない部分で超カッコつけたり空回りしがち。私が人一倍睡眠時間が長いのは、寝てその日一日の行動を丸ごと忘却しなければやってらんねーほど失敗が多いからなのである、きっと。人間の脳みそとは本当によくできている……。

とはいえ、一般ピーポーは多少「やっちゃった」としても一時的で事は収まる規模がほとんどである。
「忘れてねっ、あの時お酒飲み過ぎてたからさー」
「あれは無かったことに!」
とか言い訳かますとか、後は無理やり記憶からケシケシするとか、テキトーに処理すればチャラ。最近ではツイッターに「こんな非常識な事をあえてやっちゃいましたー。てへぺろ☆」的な写真をアップして、自ら人生狂わせる人も多いというが、それでも、一般人のお馬鹿行為なんてある程度時が過ぎれば忘れ去られるものだ。
しかーし、芸能人はそうはイカン。
「やっちゃった」が伝説として(時には尾ひれまでつけられ)残ってしまう気の毒さよ……(泣)。
 

 

で、今回は紅白という大舞台で「やらかしちゃった」人の話である。
(同情しておきながら、紅白歌手様の黒歴史を蒸し返す私は鬼さ、嗚呼、鬼だとも!)
有名どころでは、少年隊の「仮面舞踏会」を「仮面ライダー!」と高らかに紹介しちゃった若大将・加山雄三さんとか、舞台狭しと大人数のダンサーを従え、全員裸スーツでアゲアゲに踊りまくったDJOZUMAさんとか、三波春夫さんのマネを「バカ殿」モードで披露してヒンシュク買っちゃったサザンオールスターズが挙げられるが。

私が忘れられないのは本木雅弘さんのパフォーマンスである。

シブガキ隊が解散した後も、モッくんはソロで超人気俳優の道を爆走。歌手としても彼は井上陽水作詞作曲「東へ西へ」がヒットし、1992年に紅白出場を決めたのだが。
「さあ、次は本木雅弘さんですッ!」
登場した彼の姿に、日本全国民が戸惑った。
衣装がヘン。ってか、首飾りがヘン。。
えええっ、空気入れて膨らませたコンドーム巻いてる??
「♪がんばれ〜みんながんばれ〜♪」
クネクネと前衛的なダンスを踊るモッくん。眉毛を消し目の周りを黒く塗った化粧がこれまた功を奏し(?)暗黒舞踊さながらの迫力である。さらに間奏では風船大に膨らませたコンドームを掲げ、あろうことか半ケツを披露!じゅっ、熟女ファンへのサービスか??
どよどよどよどよ……。
紅白会場が、ミョーなざわつき方をしたのは言うまでもない。

さて、私は当時親友Iと一緒に「電話年越し」をするのが恒例であった。
紅白を見たあと、どちらからともなく電話を掛け、
「5・4・3・2・1、あけましておめでとうございまーす!」
とカウントダウン&新年のご挨拶をするのである(うっはー青春だったなあ)。
Iはモックン命。さて、大ファンの彼女はあの彼のパフォーマンスをどう見ているのじゃろうて。私は興味津々で電話を掛けた。すると。
「もう今年限りでモックンのファンやめるぅぅ……」
第一声、地を這うようなIの低い低いつぶやき。あまりの凹み具合に私はビビった。
「なんでモックン、なんであんなヘンな……コンドームなんてあんなヘンな……気持ち悪いクネクネダンス……あんなヘンな……」
壊れたレコードの如く「あんなヘンな」を繰り返すI。だっ、ダメだこりゃ。カウントダウンどころじゃねーなー(汗)。私は他に言葉が思い浮かばず、
「ありゃすごかったねー」
と慰めにも何にもならない相槌をひたすら打ち続けた、切ない1992年の年越しであった……。

とはいえ、モックンも単に気が向いたからコンドーム衣装を着て半ケツを出したわけではない(そりゃただのヘンタイである)。彼なりに、エイズ撲滅の意味を込めて……という、深〜い社会的アピールがあったそうだ。
当時はちょうどエイズが世界的に問題になっていて、「性交渉の時はコンドームを使おう!」と大々的なエイズ撲滅キャンペーンが行われていた頃。原宿とかにはコンドームショップが堂々オープンし、もはや「雑貨」感覚で売られていた。秋山孝さん作の可愛いキャラクター「コンドーム ボーイ」なんて、しょっちゅう雑誌とかで見たっけ。
紅白はこういった時代背景や流行をスクラップしている感が面白い。
アーティストやファン達にとっちゃ「やっちまった」状態のパフォーマンスでも、見方を変えれば、味わい深い歴史的資料なのである。

 
 
 
-ヒビレポ 2013年10月27日号-

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