散歩がてらに部屋を探す 第5回

立川編2 ~非効率の中に見る「美」~

 
半澤則吉
 
 

 
 

前回のあらすじ
立川の街に降り立った半澤。まだ完成してもいないIKEA、ららぽーとに思いを馳せ立川移住もなんだか乗り気な模様だ。一件目はイマイチだったがまだまだ立川内見は続く。

 
物件No.11 立川1DK 2階

 

○1DK フローリング8帖 和室6帖
○最寄り駅:多摩モノレール和泉体育館駅徒歩12分 
○家賃5万5000円/敷1礼1 

 

 
立川内見を決め、まず見たいと思ったのがこの物件だった。何せビジュアル面が素晴らしい。間取り図をこの場に掲載したい、その一心で内見希望を出した。ここまで読んでくださっている方は分かるように、案外に面白い間取りはないものだ。僕のように広い方がいい、とか普通の要望を持ってしまうとなおのこと、物件はふつう長方形になる。が、どうだろう、この三角形の美しさ。攻撃的なフォルム。非効率の中に見る「美」である。いかにも「調子のって建てちゃった」感がありネット検索中に思わず唸った。四角形ばかりじゃつまらない、そんな出来心から行ってみたら、案外に面白くなかった… 残念だよ。

 

 

なるほど確かに三角形のバルコニー。攻めている。あれ、でも狭くね。台形のリビングも狭くね。
そして他はけっこう普通。

 

 
間取り図で見た時はお得スペースに見えた部屋と部屋の間のスペースもただの廊下

 

 
和室は普通。うん、こうなるよね。まあ普通だよね。しかもこの物件、恐ろしく遠いです。車欲しい、クラスです。立川からモノレール、さらに徒歩12分。家賃の低さは魅力的だがさすがにアクセス悪過ぎ。あとどう考えても住みにくいだろう、このリビング。間取り図見た時の興奮はどこへやら、何の感慨もなく次の物件へ。なんだよ、非効率の中に見る「美」って。

 
 
 
物件No.12 立川1LDK 2階

   ○1LDK フローリング9帖 和室8帖
   ○最寄り駅:立川駅徒歩14分
   ○家賃6万3000円/ 管理費2000円/敷1礼1
    間取り図なかったのでうろ覚え。

 
車で10分くらいかけ、立川の街中へと戻る。どうしても見せたいと、不動産屋のお兄さんイチオシ物件へ。部屋に入ると、なるほどこれはキレイ。文句なく良い物件だ。お兄さんいわく、古い物件を安価で買い取って、格好良くリフォーム、賃貸で稼ぐという仕組みの不動産屋が手がけているらしい。なるほどプロの仕事だ。
「都心だったらまあプラス2万うん千円はしますねえ」
確かに… いや8万円台では借りれないのじゃないだろうか

 

 

まず内装が美しい。出窓とか、これまでに見たことのないシステムに感激した。昼時だったせいか窓という窓から光が入り優良物件感を演出しまくる。

 

 

見にくい写真で恐縮ですが、収納がでかい。シックな黒の収納がドーンと2間。

 

 

また他のアパートにはあり得ない、ドレッシングルーム? とにかくもお風呂とトイレの間にでっかい洗面所が。

まず間違いなく、これまで見てきた中で一番ランクの高い部屋だった。これが6万円台はやばいですな。と、不動産屋に帰った後も高揚したままの僕にお兄さん。
「即決しないとこれは、なくなっちゃいますよ」
まあ、そらそうですよね。
「でも、さすがに今日は決められないのでまた来ます」
のらりくらりと営業トークをかわし不動産屋を後にした。まあ、あの物件は2週間もあれば埋まってしまうだろうなあ。ちょっと惜しい。例えば渋谷徒歩15分とか、荻窪徒歩5分でこの条件なら即決もあり得るが、忘れてはならない。そう、ここは立川なのだ。さすがに即決はできなかった。
今回はあくまで仕事ついでの立川探訪、午後は労働に従事した。
けれども、働けば働くほど頭をよぎるドレッシングルームと出窓、美しい内装のあの部屋。すっかり立川に気持ちを奪われ、今後は件の部屋でなくとも立川周辺ないし郊外で探そうと、僕はそう心に決めた。

が、数時間後、その決意は驚くほどあっさりひっくり返ることとなる。

その日、仕事に同行してもらったカメラマンJさんの車で帰ったのだけど、自然不動産トークとなった。(Jさんはあらゆる仕事でお世話になっている方なので気の知れた仲だ)
「いやあ、立川に住むってのも案外ありですよ。広いし、安いし。考えてみれば、都心のメリットってむしろないような気すらしてますよ、今は」
と、鼻につく言い方で語る僕。対して、Jさんは軽やかにハンドルをさばきながら僕の郊外移住論を一蹴した。たった一言で。
「そうですか? 自分は東京にいる限り23区外は行きたくないですね」

Jさんも僕と同じく地方出身で長く賃貸暮らしをしてらっしゃる。しかも今の彼の住まいは僕の家と近く、年齢も近い。似たような状況に身を置くJさんの言葉は、言うまでもなく僕の胸を打った。何の根拠もないが、えらく説得力がある「23区外はイヤ」、という意見。
「せっかく東京にいるんですから、杉並区とか中野区とか世田谷区とか言いたいじゃないですか」
確かに。言いたい、やはり杉並区とか言いたい。でも、でもでもIKEAが… そんな僕の囁きは彼の耳には届かず。
気付けば、人の意見にメッチャクチャ左右され、立川案、さらには郊外案の廃止がほぼほぼ決まった。

 
 
【今回のまとめ】
○中央線は三鷹、吉祥寺までは値段落ちにくいが以降は基本遠くへ行けば行くほど値が下がりやすい。再開発目前の立川は今後地価を高める可能性あり。
○とは言え、都心に比べると1~2万円は安い。広い物件も多い。
○郊外に住む、都心に住む、と言う問題はライフスタイル次第ながら僕は今のところ都心派
 
 
 
-ヒビレポ 2013年10月30日号-

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