昭和歌謡宅急便 紅白バンザイ特別編 第5回

その衣装でええんかっ!!

 
田中稲(11号で「大阪から来た女」執筆)
 
 
 
 

いきなりだが、うちのオカンはひっじょーにオサレな人である。顔は果てしなく水前寺清子に似ているが、選ぶ服は着物ではない。超モダンで最先端のお洋服である。姪っ子甥っ子には
「遅れてきた貴族」
と呼ばれるほどで、なんちゅうか
「他の人と一緒は嫌。私は世界で一つだけの花よ!」
というプライドがガンガンなのである。あまりにもオンリーワンを目指すがゆえ、時にはエジプトあたりの遺跡で見かけるような文様のワンピースを購入し、周りのド肝を抜くこともある。
しかしそれも良し。貯金という概念が無いのが非常に困ったところだが、あの派手さがあってこそのオカン。
自分を演出できる術を知っているというのは、本当に素晴らしい才能だよなあ。リスペクトせずにはいられない。彼女が地味な服ばかりを選び出したら、その時こそは「ボケが始まった」と覚悟せねば、と思っている(本人も「私が服に興味が無くなったら病院に連れてってくれ」と言っている)。
 

 

……とまあ、相変わらずミョーな私事で幕開けした昭和歌謡宅急便なのだが、私が今回強調したいのは、オカンがすげーファッショニスタということではない。ファッションちうものにはその人のプライドと人生が出るんですよ!ということだ。紅白も然りッ。

私が最近憂えずにはいられないのが、紅白の急激な「衣装地味化」問題である。
なんというか
「ワシたち歌で勝負してるし。派手な演出に頼らなくても聞かせるしー」
という音自慢のミュージシャンが多すぎる(泣)。
お願いだから気づいてくれい。紅白は単なる舞台ではナシ。
「今年1年を、アーティストの力技で全て浄化する夢の世界」なのだと!!

やはりねー、そうなると現実を忘れるべくロマンティックかつキンキラキンにしてもらわないと。
いや、値段じゃないの。工夫が欲しいのよ、工夫が!!
その点から言えば、やはり小林幸子さんはスゴかった。途中からスタッフが暴走したのか、派手衣装から「装置」へと発展、ご本人すら背景化してしまい、皆「歌を聞く」以前に幸子様の姿を探しまくる、という本末転倒な状態に陥った過去も微笑ましいではないか。全ては「みんなに楽しんでほしい」というプロ意識から。私はこういったサービス精神が大好きだ。
それゆえ、去年末の幸子様不在はかなり不服であった。
なんじゃとうぅ?結婚した相手がちょいとばかりややこしいからといって、毎年大金叩いて命綱を腰に巻き数十メートル上からシンガソンしてくれた幸子様を切るってどーいうことよッ??てなもんである。
しかし、私のような一般ぴーぽーの怒りがNHKを動かせるはずもなく、幸子様は落選。その代り、なぜかご当地ソングの歌姫水森かおりさんがスルスルと天井高くスカートの丈と共に昇っていってくれた。NHKも、とりあえず誰でもいいので「ビックリ衣装枠」は保持したいようである……。

この他記憶に残っているのは、たいせーがグルグル高速でフライング回転を魅せた「シャ乱Q」、ライトを反射しやすい黄金の衣装で揃えた「AAA」。彼らに関しては
「がんばっちょる……がんばっちょるのぅ! ありがとう、ありがとうっ!!」
とテレビの前で拍手を送り、今後の活動を応援しようと決めた。

また、派手ではないがナナメ上の発想で観客の度肝を抜いたのがジェロだ。自分に演歌の心を教えてくれた大好きな祖母の顔を熱転写プリントしたブラウスを着て熱唱する、という熱すぎるにもほどがあるソウルを魅せてくれた。
「♪あなた追って出雲崎ッ」
ジェロが熱唱するたびに彼の腹部で揺れる、祖母の満面の微笑み。やはり大陸で育った人の発想は島国ニッポンの予想をはるかに超える、と感心せざるを得なかった。
 

 

ところが、このように「一生に一度の出場かもしれん」と張り切るアーティストは年々減り、最近は不況のせいもあるのか地味。ここ数年、衣装のディープインパクトに遭っていない。頼むからそろそろ「いつもの通り、いつもの自分で歌います♪」的なステージは避けてスペシャル感を出してちょうだいっ。
私が遭遇した普段着アーティスト第一号は白シャツジーンズで登場した、GAO(歌唱曲:「サヨナラ」(1992年)だった。近年ではナンバーTシャツで出場したアンジェラ・アキにひっくり返った。紅白にTシャツだとぅ??? 同じナンバーTシャツでも電球を仕込んでこいっ。
そしてそして、忘れもしない2003年のあの男。
そう。「さくら(独唱)」で出場を果たした森山直太朗である。
真っ暗な舞台で、真ん中にスポットが当たる。ぼーんやり浮き出した彼の姿を見て私は失神しそうになった。

すすすすスウェットの上下ってあんたーーーーッ!!!
せめて中に着ているらしきサーモンピンクのTシャツ光らせなさいよーッ(雄叫)。
寝起きか? 寝起きなのかッ??
お母さんの森山良子は何も言わなかったんかぃ(言いそうにないなあ森山良子)。
そのままコンビニに寄ってからあげクンでも購入しそうな格好の彼の歌唱は、悔しいが鼻血出るほど素晴らしかった……。

ということで、確かに服装と歌唱の素晴らしさは比例しない。分かっている。
が、森山直太朗君もアンジェラアキさんも、よーく理解してほしいのだが、君たちのお気楽ファッションは、派手にしてくれる演歌歌手やアイドルちゃんの努力があってこそなんだぞ! 全員がスウェットやTシャツで歌う紅白なんて想像したくもないわぃ!

ということで、今年も是非ともうまーく派手組90、地味組10くらいの割合で会場を華やかにしていただきたい。アーティストの皆さん、頼みます……。

 
 
 
-ヒビレポ 2013年11月3日号-

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