ぼんやりクッキング  第1回

ツォイワン

カルロス矢吹(第2号で「尿ボトルとコンドーム」執筆)

 幸運なことに、人よりも多く海外に行く機会が多い。更に幸運なことに、結婚したり転勤したりで、大体の場所には知り合いが住んでいて、しょっちゅう彼ら彼女らの家に泊まらせてもらっている。そうすると、家の人がご飯を作ってくれたり、ガイド本に載っていない地元の人が行く大衆食堂を教えてもらうことが出来る。海外に出たら、なるべくそういう地元の人と同じ食生活をしたいじゃないですか?日本に来た外国人が、寿司や天ぷらを食べずに、豚の生姜焼きや牛丼を中心に食べ歩く様に。そうやって食べて来た、世界中の「焼きそば」や「牛丼」を、うろ覚えの記憶を頼りに、日本で再現してみよう。というのが、この「ぼんやりクッキング」であります。

 やるにあたって、二つのルールを自分に課した。一つは、あくまでも記憶を頼りに、ネットなどは一切見ないこと。もう一つは、ネット通販や高級百貨店などを使わずに、一般のスーパーにある食材だけで再現すること。こうした方が、味がどう転ぶかわからず、単純に作ってて楽しいので。

 さて、そんなワケで一発目はモンゴルの料理、ツォイワンを思い出してみる。
モンゴルの首都ウランバートルには、去年の11月に行った。滞在させてもらった友人(日本人)の家は、学生街のド真ん中。学生向けの安い食堂がそこら中に溢れていて、その中で「一番安くて美味いんだ!」と友人が紹介してくれたのが、看板も何も出ていない、カラオケボックス(モンゴル人はカラオケ大好き)の二階にある、薄暗い食堂だった。従業員は、コックとウェイター二人ずつ。当然、メニューはモンゴル語のみ。午前10時の開店から、10分と経たずに店は学生で溢れかえる。そんな中、席に着いたらお手手を挙げてウェイターを呼ぶ。友人は仕事に行ってしまったので、直感を頼りにメニューを指差して適当に注文。そうして出てきたのが、モンゴル風蒸し焼きそば、ツォイワンであった。

 一目見て圧倒されたのは、その量である。フリスビー大のお皿に、半円に盛り付けてあるのだ。その上に、薄く焼いた卵をペロンと乗っかってて。ぽかぽか湯気を立てている麺は、平らなうどんくらいの大きさで、見た目は少し粉っぽくパサついている。他に入っているのは、ぶつ切りの羊肉と、細切りにされた野菜達。どれ、まずは一口、ずんずるりん。

 ふむ、羊肉の旨味を麺と野菜が吸い取っていて、味付けも塩だけだがしっかりとしている。麺は確かにパサついていたが、実際に食べてみるとこの食感は確かにこの味に合っている。野菜もタマネギ、ニンジン、ピーマン、ジャガイモと、意外に具沢山。量は多いが、飽きが来ずに結構な量でもペロリといけてしまう。このあたり、日本のちゃんぽんと似ているかもしれない。全部食べれば、当然胃袋には確かな達成感。これでたったの2000トゥグルグ、約140円。学食だなー。

 11月のモンゴルは、ダウンやコートがないととてもじゃないけど外には出ることが出来ない。寒さが苦手な僕にとって、味と量を兼ね備えたツォイワンは、大いに外出への推進力となってくれた。やっぱり食べ物を身体で燃焼させるのが、一番の寒さ対策ですからね。一週間ほど滞在しましたが、昼間は大体ここでずるずる麺を啜っていました。

 さて、それでは早速このツォイワンを再現してみる。用意した材料はコチラ。

ほうとう 1人前
羊肉 200g
タマネギ 1個
ピーマン 2個
ジャガイモ 1個
水 適量
塩 適量
コショウ 適量
卵 2個
サラダ油 適量

「モンゴルでは、ニンニクは使わないよ。日本のモンゴル料理屋は、日本人の舌に合わせているだけで、実際には肉の脂と塩だけで味付けする。」という友人のアドバイスを基に買い出して来た。羊肉200gが800円したので、この時点で日蒙の経済格差を感じたりしたのだが、まぁ羊肉はこの国ではポピュラーでないので気にしない。本当はほうとうではなく沖縄そばが売っていればそれが一番近いのだが、残念ながら手近な店には置いていなかった。ていうか三軒くらい周ったらどの店にもほうとうが揃っていたことの方が驚きだった。そんなにポピュラーだったのか、ほうとう。

 では。調理に取りかかろう。まずは野菜を丁寧に細切り、羊肉も野菜と同じ長さで適当に切り揃えておいて、ほうとうを下茹でたら、下ごしらえ完了。フライパンに油をひいて、肉→野菜の順で放りこんで、しっかり火が通ったらほうとうと水を入れて、蓋を閉めてしばし蒸し焼きに。脂や水分を麺が吸い込みながら、丁度良い具合に蒸されたところで、塩・コショーで味を調えて、完成。お皿に移した後、一応モンゴルの店に倣って、卵も焼いて乗っけておく。

 それでは、いただきます。ずんずるりん。おぉ、これは、初回からいきなりの、只の成功である。前述した記憶と寸分違わず、同じ味が出来た。しかし、ほうとうでは、やはり少々麺が太すぎた。ここだけは大きなマイナスポイント。もしもこれから再現される方がいらっしゃいましたら、沖縄そば、もしくはうどんでお試し下さい。ただ、「羊肉も高いから豚にしよう」だと、ただの「焼きうどん」になってしまいますのでご注意を・・・。

 次週は、メキシコを思い出します。

–ヒビレポ 2012年10月4日号–

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