展示される生きものたち 第7回


爬虫類にさーわれるよ・体感型動物園iZoo

 
日高トモキチ(生きものなんとか紀行連載中)
 
 
 
かつて伊豆アンディランドという亀専門のテーマパークがあった。未訪である。
とりあえずアンディというのが飼われていたゾウガメの名前に由来するのをなんとなく情報として知っていた程度だ。
そんなアンディランドは2012年に閉園してしまう。最晩年には年間入園者数が2万人を割っていたそうなので、そりゃちょっと立ち行かないよねな納得のクローズではあった。
生体展示施設はどうしてもそれなりのランニングコストがかかる。上野や旭山が300万人来た来ないで騒いでいるご時世に、1日あたり50人程度の来場者でやってゆくのはちと厳しい。
このアンディランドを爬虫類研究家の白輪剛史氏が買収。爬虫類全般のテーマパークとして改修したのが、体感型動物園iZooである。昨年暮れに開園したばかりでまだ新しい。
 
 
伊豆の動物園だからイズーです
 
 

 

所在地である河津は初春に咲く河津桜で有名な温泉町である。鉱物クラスタには河津石をはじめ各種の希少な金属鉱物の産地として名高い。下田の手前、東伊豆もだいぶ端っこの方だ。東京からのアクセスはあまり便利とはいえない。
それでも今年2回訪問しているのは、かなり楽しい「動物園」だからだ。
なにがそんなに楽しいか。まずはTVCMをご覧頂きたい。っていうか、ヒャダイン先生の手になるCMソングを聞いて頂こう。
 
 

 
 
地域限定で東京ではオンエアされてないのが残念なのかむしろ幸せなのか判断に苦しむところだ。
とりあえず初訪問の際にはそこらじゅうで手当たり次第にヘビーローテーションされており、かるく30分ほどで洗脳された。再訪したときは若干控えめになっていたから、お客か従業員からなにか訴えがあったのかもしれない。
フルサイズでは「爬虫類にさーわれるよ」の後に「思ったよりさーわれるよ」のフレーズが挿入され、どうせ大して触れまいとタカを括る軽率をいましめている。
 
 
けっこう明るい館内 明らかに昭和の施設とはちがう
 
 
思ったよりさわれると言っても、むろん飼育されている生きもの全部がボディタッチOKなわけではない。キングコブラとかヨロイハブとかうかつにさわるとこちらが死ぬる。反キリストの象徴としてエデンの園を追放される魔性に対し、アンタッチャブルな魅力を感じるマニアも少なくない。
あと、当然ながら触れられることに対してストレスを感じ嫌がる種類もいるわけで、かれらは普通に水槽やケージの外から愛でることになる。
呑気そうな姿は状態の良さを示している。可愛がられているのだろう。
 
 
さわると怪我するたぐいの皆さん 
 
 
犬猫やウサギ、ハムスターといった連中は、そこまで大好きじゃなくてもとりあえず可愛がることができる。
けれどiZooで展示されている生物の多くは、好きでなければ到底相手にできない。
来場者を歓迎するために全身をでっかいニシキヘビに絡まれて重たそうに歩き回っているお兄さんは、あきらかにヘビ君と仲良しなのである。
別のお兄さんが連れ歩いているボールパイソンはお客さんにも絡む。同行のともだちはこのおとなしいニシキヘビを渡されてたいそう喜んでいたが、犬猫と違って相手に肩とか腰とかのホールドしやすいポイントがない。
いっぽう知らない人間の腕に置かれたボールさんは興味しんしんで気の向くまま適当に這いずり回る。
かくして蛇と人間のコミュニケーションは、抱いてあげてるのか襲われているのかわからない体になるのである。見ていてなるほどと理解した。

さて危険生物ゾーンを抜けると、お姉さんが机の上にアゴヒゲトカゲとニシキヘビとワニの赤ちゃんを並べてバナナの叩き売りっぽい雰囲気を醸し出している。
ふれあいコーナーなのだ。
 
 
こちらおさわり可となっております
 
 
ワニとニシキヘビのアルビノ(白化個体)はまだこどもだが、トカゲはアゴヒゲも堂々としたご年配である。いや若い頃からアゴヒゲなんだけどね。
「この子はもうベテランさんなんです」
人間に持たれてもまったく動じる気配はない。悠揚迫らぬ感じは太古の恐竜を連想させるものがあり、なんだか感心した。
 
 
女の子の手の上で孫娘とふれあうおじいさんぽくなっております
 
 
お姉さんの背後ではリクガメがのんきにウッドチップの上を歩き回っている。
甲羅を磨かれているのは現在一切の商取引が禁止されているホウシャガメだ。
磨くほどに放射状の紋様が際立つ美しさゆえに、かつては乱獲の対象となりあっという間に希少種になってしまった。いま日本にいるものは、すべてワシントン条約批准以前に輸入された個体のはずである。
ここまで生き延びる間にはさまざまな物語もあったことだろうが、若い娘さんにゴシゴシされている図はいかにも悠々自適の老後を送っているように見える。
時折は囲いから脱走して近所を徘徊するおじいさんもいる。そのたびにお姉さんに仕方ないわねえとブースに戻される。
 
 
爬虫類だいたいおじいさんっぽい
 
 
中庭に出ると、植え込みに種々のカメレオンが放し飼いにされている。この連中は熱帯でも標高の高い場所に生息しているため、伊豆あたりだと冬の方が元気なのだそうだ。
今年の訪問は2月と9月だったが、前者の方が明らかに樹上で活発にゆらゆらしていた。
まあどんなアクティヴでもゆらゆらする程度です。捕虫行動以外はほぼ爬虫類界のナマケモノ的存在ですからねカメレオン。なかなか走って逃げたりとかしないので放し飼いが可能なわけで。
ただしカメレオンはおさわり禁止。デリケートな皆さんなのです。

中庭には他もヤギやアルパカが何の前ぶれもなく佇んでいる。出口に向かう途中にはフクロウさんたちがじっと辺りを睥睨している。
このフクロウは初回訪問時には気づかずスルーしており、再訪の際にあれ置物があると思って近寄ったら生きてたので驚いた。
なにゆえそんなサプライズが起きるのか。
iZooフロアガイドないねん。どんな構造でどこに何がおるのか、入ってみんとわからへんのんじゃ。
 
 
中庭とその住人
 
 
マップはありませんが当日中は何度でも再入館が可能なので、じっくり見て回ってくださいということらしい。
逆に言うと初見で効率的な巡り方をすることはちょっと難しい。かならずある程度の余裕を持って訪れることをおすすめします。私は3周しましたが、前述のように見落としがありましたでね。
あと、たぶんまだコインロッカーがありません(冬に聞いたときはなかった)。大きなお荷物は車に置いてゆくか駅で預けてしまった方がヨイです。

初回は電車+タクシー、次回は東京から車での訪問だった。東名降りてからが少々めんどくさくて時間もかかることが判ったので、次はまた踊り子に乗ろうと思う。
さいしょの来園の際、タクシーに乗って行き先を告げると運転手氏が言った。
「ああイズーね。私は入ったことないんだけど、行ったお客さんの評判すごくいいんだよね。亀の頃より全然」
まあね。アンディランド好評さくさくだったら潰れないよね。

気のいい運ちゃんは、帰るときは電話くれたら迎えに行きますよと連絡先を渡してくれた。
でもなんとなく河津駅まで歩いちゃったのだ。海沿いだし面白いかなと思って。
すると駅頭で「あ、お客さん」と声がする。やべえ面割れてるよ。運転手さん一回乗せただけの男の顔覚えてやがった。なんかおれひとりで勝手に戻って来てて超気まずいんですけど。
自意識過剰気味の不安をよそに、運ちゃんは屈託がない。
「どうでしたiZoo?」 
ええと、すごい楽しかったです。
「やっぱり? 楽しいんだなあ。いや良かった! また来てくださいよ」
はい。次はこちらに連絡させて頂きますからよろしくお願いしますね。
「お待ちしてます!」

そして半年後に自分の車で再訪しました。くそうウソばっかりだ。
ちなみに河津駅まで歩いても結局国道を行くだけで、海辺に出られる場所もあまりなく別に面白くありませんでした。お金がかからない以外のアドバンテージは特にないです。

先日、開館1周年を待たずして入園者数10万人を突破したというiZoo。今後もぜひこの調子で爬虫類と仲良くできる展示を続けて頂きたいと切に願う。
フロアマップは作ってくれてもいいと思うけど。
 
 
さーわれるよ
 
 
 
 
-ヒビレポ 2013年11月16日号-

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