働かないで暮らしていける世の中になってまいりました。  第7回

空間が照れている

 
山下陽光
(第11号で「ライターってカッコいい感覚どこ行った?」執筆)
 
 
 
 
夏に結婚式を京都ででやって、妻の祖母の家に行ったときに、応接間にあるピアノを妻が弾いた。
久しぶりに音をだしたであろうピアノの音はとてつもなく素晴らしく、妻のピアノの腕前はとてつもなく下手くそで、何度も何度もつまずきながら、どうにかバイエルか何かのギリギリ覚えていないようなメロディを響かせてるんですが、これがもうたまんないんすよ、妻の祖母の家のピアノを想像してくださいよ、豪邸でもいいし、応接間ってのがヒントだな、ばあちゃん家に応接間なんてあったっけ? ひょっとして金持ちの妻か? とかいろいろ考えるのもいいんですが、そこじゃないんですよ、祖母のピアノってやっぱり時間が経ってる。なかなか弾かれた形跡がない。空間も壁紙もまさかピアノが弾かれるという守備をしてなかったから、応接間がビンビンに照れてんすよ。うわぁーーこんな感じだったよたしかに!って壁紙の糊がはがれるんじゃないか?と思う程に久々感がギンギンなの。なんなのコレ。
妻祖母の家に来たのははじめてなのに久々に奏でられた素晴らしすぎる下手くそなピアノの音に空間が照れてる。なんだよこれは、最高すぎるじゃないか。
同窓会の空間を尾行したらこんな感じの気分に何度も出会えるんだろうか?
いや、同窓会は人と人が懐かしがって照れてるし、久々に訪れる小学校の校舎にも人が照れたりしてるだけだ。空間が照れるって何だろうか?
 

 

年内に実家がある長崎に移住する予定なので長崎に物件を探しに行った。
長崎市は車が通らない階段でしか行けない物件は価値がなく、人気もない。
それどころか、5年前から長崎市が老朽空き家対策事業として、住まなくなった家を長崎市に無料で提供してくれたら、無料で破壊して駐輪場や公園にしてあげますという謎のサービスがはじまり、夢のマイホームを無料で提供する奴なんているわけないだろ!と思ってたら、申込み殺到してなんと300件もの申し込みがあり、実際に壊して駐輪場などのスペースに変わったのが50件。ほかの250件は手つかずの状態とのこと。無料でもいいからもらってくださいってのが最低でも250件はある。ここに住むしかないだろと思って長崎に物件を探しにいったんですが、これがなかなか見つからない。そのあたりについては長くなるので、またいつか。
それよりも、階段を上って歩いていると、妻祖母ピアノのような空間に照れられているのがギンギンに伝わってくる。後先を一切考えずに建てられた階段の道と沿って建てられた夢のマイホームが墓場になる寸前で、久々に関係ない人が通った。
好奇心でこの道を通る人すらいないんだぞ。と言われているような、とにかく下から上っていくアリの巣のような道をワクワクしながら登ったり下ったり。
なんなんだろうか? 久しく通られてない階段の道。
赤瀬川原平らが結成した路上観察学会のメンバーでもある林丈二さんは東京の道を全部歩くと言って、
自分が歩いた道を赤ペンで地図上に書き込んでいるというのを読んだ事がある。

ぎゃぁーーーーー、長崎の階段の道を全部歩きたいなぁ、階段の空間を照れさせたい。
そこで見つけた面白い写真を撮って、考現学1000本ノックしたいですね。

さぁ、働かなくても暮らせる世の中になってきてるでしょうか?
このやろーーー今回は何の関係もないほのぼの文章じゃないですか!

それでは、また来週!

 
 
 
-ヒビレポ 2013年11月14日号-

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