MAKE A NOISE! 第22回

メリル・ストリープのお言葉(第1回をご参照下さい)に従い、まだ知れ渡っていない面白い映画をロンドンからMake a noise!
 

悪いのはシェイクスピアではなく

 

山口ゆかり
(第13号で「ロンドンでゲイ、レズビアンたちに混じる」執筆)
 
 
 
前回、前々回と、この人のデビュー作を見よ!と熱くお薦めの2監督でしたが、今回はデビュー作での嫌な予感が、2作目で決定的になったレイフ・ファインズです。

ムキムキのコリオレイナスから一回り小さくなって会見登場のレイフ・ファインズ 2011年ベルリン国際映画祭(撮影:著者)
 
 
初監督映画『英雄の証明(原題:Coriolanus)』試写で、主役コリオレイナスでもあるファインズがしゃべりだした途端に席をたった方が!…実は、後に続きたい気分でした。滔々と語りだされる格調高い台詞にあちゃー。
 

 
 

 

ウィリアム・シェイクスピアさんに罪はありません。
同じく現代に舞台を移してのシェイクスピア映画でも、バズ・ラーマン監督レオナルド・ディカプリオ&クレア・デインズの『ロミオ+ジュリエット』はテンポ良く魅せます。
 
 

 
 
ジル・ジュンガー監督ヒース・レジャー&ジュリア・スタイルズの『ヒース・レジャーの恋のからさわぎ(原題:10 Things I Hate About You)』も上手いこといってます。『じゃじゃ馬ならし』を基にした軽いタッチの学園ラブコメですが、今となっては歌って踊る若く健やかなヒースの姿に涙無しには見られない1本。
 
 

 
 
『Coriolanus』に、そういうこなれた現代版にしようというつもりは毛頭なさそう。逆に、いかにシェイクスピア劇をそのままやるかにパッション傾けてる。今時の戦場なのにナイフで戦う大将同士を部下が囲んで見てる状況ってあり?
チャンバラで見得を切ったり、口上を述べるサムライに、いちいち笑う外人さん状態。スルーして見るべきところも突っ込まずにはいられない。そういえば「口上しゃべり終わる前に切っちゃえばいいのに、どうして待つんだ敵?」みたいなギャグ言ってたのはたけし?まっちゃん?

ファインズは、『シンドラーのリスト』のナチス将校役で一躍注目を浴び、『イングリッシュ・ペイシェント』や『ナイロビの蜂(原題:The Constant Gardener)』など作品にも恵まれ、着々と映画俳優としてのキャリアを築いてきた人。でも、もともとロイヤル・シェイクスピア・カンパニーにも出ていた舞台俳優で、やっぱり、やりたいのはそっちかとがっくり。

さすがに、『Coriolanus』でも、かっちょいい台詞を良い声で響かせるようなことは堂に入ってます。でも、上にあげた将校以外の2本のように、心のうちにいろいろありすぎて、かえって口が重くなってる役の方がはまるのに。
デヴィッド・クローネンバーグ監督『スパイダー/少年は蜘蛛にキスをする』がその白眉。身内の怖ろしい犯罪を見てしまったことがトラウマとなり、蜘蛛みたいにロープやら紐やら張り巡らしていた子どもが、大人になった主人公でした。
 
 

 
 
しゃべりたおすなら、いっそ前回にあげた『In Bruges』のスウェアしまくりみたいな方が、意外性があって面白いし。
にもかかわらず、『Coriolanus』はBAFTA新人監督部門にノミネートされました。ノミネート作品では、若き日系人監督ウィル・シャープの『Black Pond』(第6回をご参照下さい)も応援しつつ、一押しだった『思秋期』(第13回をご参照下さい)の受賞にほくそ笑みました。ファインズ、これで俳優業に専念してくれたらいいなと。

その願いもむなしく、また『The Invisible Woman』というのを監督です。チャールズ・ディケンズの愛人が主人公で、ファインズはディケンズ役。
ディケンズといえば『クリスマス・キャロル』のような人道主義的な作品で有名なのに、愛人囲ってたとは。それも公にならないよう、まったく日陰の身にさせて、ひどいです。
文豪だけに、修羅場でもスウェアするようなことはなく、文学的な台詞を吐いたりします。やっぱり、そういうのがやりたいんだなあ、ファインズ。
 
 

 
 
それでも『Coriolanus』より面白いのは女性陣のおかげ。事実に基づいた原作がクレア・トマリンによるものなら、脚本もアビ・モーガン。モーガンは前回の『シェイム』もそうだし、最近のってる脚本家です。この人の脚本ならストーリーが面白いのはほぼ保証されます。
写真でモーガンとファインズにはさまれているのは本妻役のジョアンナ・スキャンラン。英テレビのコメディで知られた女優さんです。洋の東西を問わず、お笑い系は演技も上手い人が多いです。
 
 

アビ・モーガン、ジョアンナ・スキャンラン、レイフ・ファインズ
 2013年ロンドン映画祭(撮影:著者)

 
 
思えば、『Coriolanus』が嫌なのは格調高い台詞より男度の高さだったかも。なにせ『英雄の証明』なんていかつい邦題がついちゃうような映画です。まあ、過去のヒット作『人間の証明』『野生の証明』にあやかろうってとこでしょうけど、それにしてもねえ。
宣伝写真からして、ビルドアップした体にスキンヘッドのファインズを似たようなごつい男たちが囲んでたり…ゲイ受けをねらった?
 
 
ゲイと言えば、次回の俳優出身監督はゲイ疑惑がありますが、監督作を見る限り、違うような気がします。あっ、でも監督作を見たのは、ロンドン・レズビアン&ゲイ映画祭でしたが。

 

 
 
-ヒビレポ 2013年11月26日号-

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