月に吠える的日記@新宿ゴールデン街 第1回

全財産と引き換えに店を出した

コエヌマカズユキ(第4号で「デスマッチ・ブルース」執筆)

 2012年6月18日、それまでは「ジャーナリスト」だけだった僕の肩書に、新しく「ゴールデン街のバーのマスター」が加わった。そう、僕は新宿ゴールデン街にバー「月に吠える」をオープンしたのだ。コンセプトは「日本一敷居の低い文壇バー」。これは、僕自身が文章を書く仕事をしていることと、出版系の友人たちが客として来てくれるだろうという見通しから、「お店の中では出版系の会話が少なからず出るだろうな」と思って付けた。僕自身、本は好きだが、文学にはあまり詳しくない。むしろノンフィクションの方が好きだ。

 ところで、新宿ゴールデン街とは以下のような場所である。

「昭和24年、新宿マーケットから名を変え、屋台による一杯飲み屋街へと変貌を遂げていた竜宮マートに、占領軍による露店取り払い命令が出て、仕方なく移っていった先が旧三光町一帯であった。この町が町名変更で今は歌舞伎町1丁目となったゴールデン街である。(中略)当時、ゴールデン街は知る人ぞ知るという街で、作家、詩人、漫画家、映画、演劇などの文化人が夜な夜な、安酒を飲みながら議論に明け暮れるという界隈であった(※新宿ゴールデン街ポータルサイトより引用)」
 このように文化人が数多く集まる場所で、僕のような素人同然の32歳の若造が「文壇バー」を名乗っているのは、身の程知らずこの上ないことだろう。敷居が高いというイメージがある文学や出版の世界を、多くの方に少しでも身近に感じてほしいという思いを込めているので、文壇関係者には悪しからずご了承いただきたいのだが、実際、「いい度胸してるなぁ」とよく驚かれるし、怒られたり絡まれたりもした。いいお客様の方が圧倒的に多いが、変わったお客様もかなり訪れるのは、この身の程知らずさも一因なのかもしれない。でもそのおかげで、トラブルを含めたいろいろな経験ができるのであれば、儲けものだと思っている。
 それと、これはぜひ書いておきたいのだが、僕はものすごく大雑把で、後先考えずに行動する性格である。実はバーをオープンする際にかかった初期費用の約300万円は、僕のほぼ全財産だった。薄利多売のジャーナリスト業で、数年間かけてコツコツ貯めてきたお金である。店に費やしてしまえば、生活費さえ残らないほどギリギリの状態であった。それでも、ほぼ直感で「やろう!」と決めてお店を始めた。だから、今の僕は文無しである。
 それと、飲食店経営者としてあるまじきことなのかもしれないが、正直に書こう。僕は売上帳簿をつけていない。オープンして1ヶ月くらいはつけていたが、面倒くさくなって止めてしまった(領収書はとってあるので、確定申告のときにまとめて計算する予定だ)。だから、僕は毎日、毎週、毎月の正確な売り上げを把握していない。よく考えると自分でも恐ろしいが、だって面倒くさいんだもん。さて、こんな状態で店はやっていけるのだろうか?
 このように金銭感覚がだらしなくて、身の程知らずな僕が、新宿ゴールデン街という場所でバーをやっているというのは、我ながら不思議なことである。せっかくなので、トロさんがレポで「あけすけなるレポの記録」を書いているように、僕も毎週のお店の売り上げなどを赤裸々にさらしながら、お店やゴールデン街で起きた出来事を綴っていこうと思う。どうか、温かく見守っていただければ幸いです。

PS メルレポを宣伝に使いたくないので、必要以上にお店の情報は載せていません。もし興味を持っていただけた方は、「プチ文壇バー」で検索してくださいませ

–ヒビレポ 2012年10月5日号–

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