MAKE A NOISE! 第23回

メリル・ストリープのお言葉(第1回をご参照下さい)に従い、まだ知れ渡っていない面白い映画をロンドンからMake a noise!
 

芸術かポルノか

 

山口ゆかり
(第13号で「ロンドンでゲイ、レズビアンたちに混じる」執筆)
 
 
 
上記のように、季刊レポ第13号に場違い取材記を掲載いただきましたが、思えば、私はたいてい場違いです。場に馴染んでいることなどない気さえして、レディオヘッド『クリープ』に涙してしまいます。なんてこと言っても可愛い気のあるお若い方がうらやましい。
そんなこと言ったら気持ち悪い歳になってしまった私は、日々淡々と場違いな場所におります。
今回は、ここ最近でも見事に場違いだったお話から。

ところはロンドン・レズビアン&ゲイ映画祭。見たいのがプレス試写のない映画で、一般上映のチケットをゲットするしかない。
それが、大人気でチケット売り場に長蛇の列!しかも全員男性!ゲイ受けしそうな映画ではありましたが、ここまでとは…
 

 

「あと○枚です!」売り場の人がチケットの残り枚数を叫ぶ度に、列から人が抜けていく。私のところまでは無理そう。実際、前方にもあきらめて抜ける人が。
それでも、希望を捨てずに並び続けました。そして、私の前にいたカップル(男同士)が「1枚しかないの?しょうがないわね」てなことで放棄した最後の1枚をゲット!
そのゴールデン・チケットを手にウィリー・ワンカのチョコレート工場へ!なら良かったですが、不安なまま『Interior. Leather Bar.』上映へ。

『Interior. Leather Bar.』は、ウィリアム・フリードキン監督『クルージング』の失われたゲイSMシーンを、ジェームズ・フランコが監督として再現する話題作。ベルリン国際映画祭での見逃しの1本です。第11回(中で書いた『Dark Blood』『Don Jon’s Addiction』来年日本公開決定!)での予告通り、ロンドンで見ましたぜ!
売り場の様子から予想された通り、会場も見渡す限り男でした。全部がゲイか、ストレートもいたのかはわかりませんが、それにしても、フランコ、女性ファンはいないのか!
 
 

ジェームズ・フランコ 2013年ベルリン国際映画祭(撮影:著者)
 
 
『クルージング』は、アル・パチーノ演じる刑事が、ゲイ男性をねらうSM絡み連続殺人事件を追って、ゲイSMの世界に入り込んでいくお話。フリードキン監督が知人のゲイSMクラブで撮った40分が、公開時X指定(成人映画)から逃れるためにカットされ、その後、失われた(破壊されたとも)というもの。
 
 

 
 
フリードキン監督は、カー・チェイス、ホラーという全くの別ジャンルで、『フレンチ・コネクション』、『エクソシスト』と金字塔を打ち立てた巨匠。
何かと物議をかもす監督でもあります。『キラー・スナイパー(原題:Killer Joe)』トークの際も、刑事兼殺し屋というジョーのキャラクターについて「だって、実際、そういう刑事知ってるし」と、しれっとおっしゃいました。
 
 

ウィリアム・フリードキン監督 2012年ロンドン・トーク(撮影:著者)
 
 
そのフリードキン監督の失われたシーンを再現するからには、芸術かポルノかというあたり鋭く追求かと思いきや、素直なドキュメンタリーでした。
ゲイの映画を撮り続けているトラヴィス・マシューズと共同監督ですが、主演、アル・パチーノの役ということですね、のヴァル・ローレンとフランコがメイン。『クルージング』ゲイSMクラブ・シーンとそのメイキングちゃんぽん。

肝心の再現部分、性器は映しても、性交は映さない。ソファに横たわる男2人という撮影現場の様子、あえぎ声が雄たけびに近くなっていくのを目をまん丸にして見つめるフランコは映りますが、何を見ているかはわからない。
そこ映さなかったら再現じゃないやん!という突っ込みは批評家からも当然出てます。
 
 

 
 
とはいえ、そこにいたる葛藤は見えるので、そういうドキュメンタリーとして見れば悪くないです。
いたしている2人はほんとうにゲイでも、主演のローレンはストレートで、こういう映画に出ることを悩む。それをゲイ差別反対みたいなことで力づけるフランコ。だったら、おまえ演れよ!という突っ込みは出ていないようです。

芸術かポルノかは中度半端。芸術ってほどでもないけど、ポルノとしても弱い。びっくりして見ているフランコの顔が、ある意味、萌えポイント。
この驚く顔を見ると、ささやかれるゲイ説は違ってると思うのですが。これでゲイなら、すごい演技力だし、ストレートなら、自分の感情をカメラの前で出せるということで、役者としてはウィンウィンですね。

性交シーンといえばラース・フォン・トリアー監督。
中でも『Idioterne』では性交する局部を大写しして、表現として成り立たせています。エロくないのでポルノではない。よくわからない衝撃はあるので芸術?
 
 

 
 
芸術かどうかの判断は難しい私でも、必然性ならわかります。それで言ったら、パルムドール獲得『Blue is the Warmest Colour』のベッド・シーンは必然性大有り。女2人のこってりしたベッド・シーンは、前半の男女のあっさりしたベッド・シーンとの対比、後半の「私とのセックス忘れられるの?」みたいな台詞の裏づけともなり、なくてはならないシーン。
2女優あっぱれ、よくやった!という濃さゆえの説得力。このところ勢いのあるレア・セドゥに、これで一躍注目を浴びたアデル・エグザルコプロスです。
通常は監督だけなのに、加えて2女優にもパルムドールを贈るとは、カンヌも粋な計らいしますね。
 
 

 
 
フランコは、『Interior. Leather Bar.』に続いて、ウィリアム・フォークナーの『As I Lay Dying』映画化にチャレンジ。
原作を読んでいる人の評価は辛めですが、読んでいない私は面白く見ました。主人公一家の暮らし、当時はそういうものかと見ていたら、隣人や町人の登場で、ようやく、この一家がとんでもなく貧しく、無教養とわかってショック。
その家族の1人をフランコが演じてもいます。家族の馬鹿さ加減をあざ笑ったりするので、馬鹿じゃないかというと、性格悪いだけでやっぱり馬鹿。おまけに無茶な馬鹿なので、よけいに家族が悲惨なことになるという夢も希望もない話でした。これは原作深そう。
馬鹿馬鹿言ってますが、フォークナーを読んだこともなければ、当時の暮らしの見当もつかず、よけい面白く見れた私も馬鹿ですね。
 
 

 
 

フランコ、成功してるかどうかはさておき、チャレンジャーな監督、意欲的な監督ではあるので期待が持てます。ご存知のように本業の俳優の方では売れっ子で、最近ではアレン・ギンズバーグ役などもしてました。
映画界は、このところちょっとしたビートニク・ブームですが、次回はそちらから。

 

 
 
-ヒビレポ 2013年12月3日号-

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