MAKE A NOISE! 第24回

メリル・ストリープのお言葉(第1回をご参照下さい)に従い、まだ知れ渡っていない面白い映画をロンドンからMake a noise!
 

ビート・ジェネレーション

 

山口ゆかり
(第13号で「ロンドンでゲイ、レズビアンたちに混じる」執筆)
 
 
 
ダニエル・ラドクリフがボーイズ・ラブを演じる!と話題の『Kill Your Darlings』ですが、意外に良かったです。
アレン・ギンズバーグ・ファンも気を悪くせずにいてください。

『Kill Your Darlings』は、大学入学当時のギンズバーグ(ラドクリフ)を主人公にした伝記的映画。
ルシアン・カー(デイン・デハーン)と出会ったギンズバーグは世界が広がり、ジャック・ケルアック(ジャック・ヒューストン)たちと知り合うも、カーが殺人事件を起こし…という実話を基にしています。

ビート・ムーブメントにつながる若者たちの熱の中で、自分の才能、そしてセクシュアリティを見つけるギンズバーグ青年という青春映画としても見られます。
カーの一件が全体に暗い影を落とし、若さの勢いが能天気に流れないのも良いバランス。
 
 

 
 

 

ところで、人の顔と名前がパッと出てこない私は、映画を見ながら「この人、誰だっけ?」と脳内検索していることが多いです。この映画ではウィリアム・S・バロウズ役。頭の中で似た顔を捜すうちに、ひょいと西村雅彦が出てきたのには1人静かに馬鹿うけ。ちょっと似てませんか。

答はベン・フォスター。アイドル系?と思った『X-MEN:ファイナル ディシジョン』のエンジェルみたいなミュータント役以来、『メッセンジャー』での訃報通達係、『ランパート 汚れた刑事』のアル中のたれこみ屋と、見る度に演技力を再認識するのですが、西村雅彦似にもなれる!また評価が上がりました。

生き方含めてのビート・ムーブメントなので、作品より作家本人が興味深かったりします。フォスターのバロウズも、やっぱり、本人を見てからの方が面白さも増します。
そこで、お薦めなのが『William S. Burroughs: A Man Within』。ダンディなスーツ姿で辛らつな言葉を吐き散らす生バロウズが見られます。
 
 

 
 
バロウズが身近になったのも、この映画のおかげ。リアルタイムで活躍する姿を見ていない人=昔の人という大雑把な認識の私には、作品は読めどバロウズは昔の人でした。
それが、バロウズと並んで写真に納まる今時の人、例えばレオナルド・ディカプリオあたりの姿を見て、ぐっと近い人になりました。

コラボもしているカート・コバーンなんて、亡くなったのは先でした。享年27歳のコバーンが1994年、83歳のバロウズが1997年です。
思いのほか長命だったバロウズは、自分の後を追うように作家、ドラッグ中毒、アルコール中毒になった息子を先に亡くしています。
『Queer』を書いた動機として自らあげているように、バロウズは誤って妻を射殺してもいます。悲劇的な人生と言えるかもしれません。

『William S. Burroughs: A Man Within』はバロウズ映像を選りすぐり、その人生と文学をなぞりつつ、人柄も浮かび上がらせています。
これがデビュー作となるヨニ・ライザー監督は、インタビュー時、26歳という若さ!バロウズがそういう若い人をも魅了する理由がわかるドキュメンタリーです。
 
 
ヨニ・ライザー監督 2010年ロンドン映画祭(撮影:著者)
 
 
昔の人と思っていたのは、もったいなかったなあ。バロウズ、晩年まで、いろいろやってました。例えば、ガス・ヴァン・サント監督の『ドラッグストア・カウボーイ』と『カウガール・ブルース』にも出演しています。
若かりし日の私、前者はマット・ディロンかっけー、後者はガールズ・パワーにイェイと見てしまいました。今度見る時は、見知った人を探すように、画面の中にバロウズを探すと思います。
 
 

 
 

 
 

今回は、本人映像で、俄然、興味がわいたケースでしたが、次回は逆パターン。いけすかなく思っていたのが、その人を演じた映画を見て、考えを改めたケースです。

 

 
 
-ヒビレポ 2013年12月10日号-

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