展示される生きものたち 第11回


巳年ももうすぐ終わります・ジャパンスネークセンター

 
日高トモキチ(生きものなんとか紀行連載中)
 
 
 
いつの頃からか、実家に「世界のヘビ」という薄い本があった。あっ同人関係でいうそれじゃありませんよ。そんな時代じゃなかったし、だいたい蛇の薄い本って何かやばくないすか。
閑話休題。
国分寺の小学校に通っていた時分で、確か立川のデパートの催事でヘビ展があった際のパンフレットだと記憶している。百貨店で開催されるには少々物騒なイベントだが、高度成長期のジャパンはむだにアグレッシヴでございました。
展示自体はさっぱり覚えていない。ただ、ワールドワイドな蛇たちの美麗写真に加え、おそろしい毒蛇咬傷の事例と対処法が記されたこの薄い本は、図鑑好きな日高少年の手軽な枕頭の書となった。平和な小学生ライフにはまず使い途のない重要な知識類を遺漏なく吸収しつくしたものである。
そんな、くだんの小冊子の編著者こそが(財)日本蛇族学術研究所だった。
群馬県の藪塚に本部を置き、ジャパンスネークセンターを管理運営する、蛇関連の飼育研究展示を専門に行なう文科省管轄の財団法人であり、研究機関だ。
 
 
ジャパンスネークセンター入口(2008) 天気がわるくて禍々しい
 
 

 
 
東京で生活していると北関東地域には意外となじみが薄くなる。クルマがあればともかく、電車でのアクセスがいまいちよろしくないのだ。
長年の懸案であったスネークセンター訪問が実現したのは今から6年前の春。「世界のヘビ」を耽読していた頃からすれば実に30年越しの夢が叶ったことになる。
 
 
夢の世界なんだかとても禍々しい
 
 
25292平方メートルの敷地内にはさまざまな展示施設が散在している。案内図参照。
 
 
見る者を茫漠とした不安に陥れる案内図(A)と(B) 二枚で若干の異同があり、
たぶん下の方が正しいが上の方が怖いっていうか名称はヘビセンターでいいのか

 
 
このときは紹介記事など書こうとは思わず、ただキャーキャー喜んで回ってただけの修学旅行生状態だったため、手元に残っている記録画像がすこぶる体系的でない。
ただ、屋内展示は建物によってさのみ違いはなく、おもに生きた蛇を展示しているかそうでないかの別であったような印象がある。あと白蛇観音と採毒実演。
 
 
屹立する白蛇観音 正式な読みが「はくだかんのん」だと今回初めて知った
よく見ると光背から蛇が立ち上がっていてどういうことか説明して欲しい

 
 
パンフによれば、白蛇観音は「広く世の中の人々の家内安全、無病息災、交通安全を祈念するとともに研究などのために犠牲となった蛇類を供養するために建立されたもの」らしい。
観音を祀ったついでに蛇さんたちを供養したものか、供養のために建てたついでに家内安全やらオプションに付けたのか、いずれにしても動機がいまひとつぼんやりしていて凄い。
付近の洞穴の中にでっかい陶陶酒の甕が並んでいて首を傾げた覚えがあるが、写真がないので幻かもしれない。もしくは見てはいけないものを見てしまったのかもしれない。
 
 
戦慄の野外マムシおはなし会
毒蛇を野に解き放つ大放生会みたいなものか!
と色めきたったがたぶん「お話し会」

 
 
採毒実演というのは毒蛇の咢から滴り落ちる毒液を採取して見せるイベントで、これを実演して下さる名物研究員が口八丁手八丁の毒蛇のスペシャリスト三保尚志氏。
コブラ片手に腰抜けカップルを威嚇する姿は木戸銭を払う価値十分である。
只者ではあるまいと感じ入っていたら、2010年あたりからロフトプラスワンやネイキッドロフトで松沢呉一氏やセクシーおねえさま方と定期的に「新宿毒蛇博」なる濃いライブを開催。
http://www.loft-prj.co.jp/schedule/naked/18290
本格的にサブカルチャーの表舞台に進出なさっておられる模様で何よりだ。
 
 
つぶらな瞳が可愛らしいブラックマンバ(左上)は   
毒性・攻撃性・敏捷性の三拍子を備えた最強のスナイパー
「ブラックマンバ飼ってる施設で死人が出てないのはウチだけだから」(談)

 
 
爬虫類の展示施設としては既にiZooを紹介済みだが(第7回参照)、あのような陽性のフレンドシップはスネークセンターには微塵も存在していない。いや当事者は多少は狙っているのかもしれないが、だとすれば申し訳ないが失敗している。
全体にただよう薄ら重たい奇体な空気は見世物小屋のそれにたいへん近く、ファミリー向けというよりはあきらかに子供を泣かす系だ。
 
 
とりあえず矢印にはヘビちゃんあしらっとけ
 
 
でもね。それでいいような気もするんですよ。だって蛇だもん。
生物全般なんでもOKだけど蛇だけは勘弁な! という人は少なくない。理由はわからない。饅頭こわいの理屈によれば、生まれたときに埋めた胞衣の上を最初に横切ったのが蛇なのだろう。いまでも子供が産まれたときに胞衣埋める風習あるんですかね現代日本。
以前も似たようなことを言ったが、エデンの楽園の昔から蛇は人類の誘惑者であり潜在的に敵対者である。
スネークセンターのどこかアンダーグラウンドな趣きは、われわれの原罪意識と結びついた深い心の闇を顕在化しているのかもしれない。

絶対ちがうと思うけど。
 
 
今度は自分のクルマで行こう
 
 
 
 
 
 
-ヒビレポ 2013年12月14日号-

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