散歩がてらに部屋を探す 第12回

審査編 ~さよなら、Kさん~

 
半澤則吉
 
 

 
 


 
 
立派な菓子折りを買うのが筋だろうが、あまり大仰になるのもおかしい。悩んだ末に見栄えそこそこの菓子を購入した。不動産屋に持っていくとKさんは不在だった。他の社員もさすがに僕の顔を覚えてくれていたようですぐに対応してもらった。そらそうだ。もう何度も訪れている。たいていの人はせいぜい3、4回の出入りだろうが、僕は困った客として社内でもさぞ話題になっていたことだろう。とにかくKさんに会えず残念だったが、一仕事終えられた満足感があった。
 

 

そう、今回ついにKさんと別れる時がきたのである。と、言うことはつまり部屋が決まったのだ。連載を1回残しての決定は見事なコントロールのように思えるが正直かなり焦った。
まずは僕が住むことになった部屋から。
 
 
 
物件No.21 荻窪1K
 

      ○1K K6.5帖程度 和室6帖プラス板の間 2階
      ○最寄り駅:荻窪徒歩3分 
      ○家賃6万円/共益費4000円/敷1礼1 

 
 
前回、結論を述べなかったが大和町2Kの部屋と比べたところ、こちらの圧勝だった。即決。あの2Kの良さは「駅から遠いが広い古アパート」、このNo.21は「駅近でちょっと狭いがそこそこのマンション」。結局は『マンション』という言葉の響きにやられた。とは言え、すんなり契約とはいかないもので…。

Kさんいわく、荻窪の部屋は一刻も早く契約しないと決まっちゃう恐れが、とのことですぐに電話をしてもらったがなんと先方不在。2人で冷や汗をかいた。イヤな予感がした。結局その予感は外れ喜んだのもつかの間。直後「自転車置き場無い説」が流れかなり戸惑う。荻窪近辺の駐輪場料金を調べると2000円。溜め息が出た。また「収入証明無し問題」にも困った。僕はそう言えば今年から今の職についたので現職の収入証明がない。おまけに自営業ときているため、審査が通るかどうか本当に心配だった。Kさんも僕の状況を聞くなり顔を蒼くしていたが、何とかパス。一応ダダをこねてやってみた家賃交渉は空ぶりも幸い自転車はマンションに置けるようなのでトントンか。

改めて考えてみると、見てきた全ての物件の中で駅から一番近い。そして、そんなに広い方ではない。あれ? 半澤の目標は「広くて安い」であり、駅から遠くてもいいとか言ってなかったっけ? もしそんな疑問をお持ちの方がいらっしゃればきっと熟読してくださったんですね、多謝です。そう、当初の目標と真逆の結果となり自分でも驚いている。「駅近でちょっと狭いがそこそこのマンション」に引っ越すことになろうとはまさか思わなかった。3ヶ月間で多少心境が変わったのだろうが、大きかったのはやはり新居の印象の良さと便利さだった。正に直感勝負。それほど広くない部屋をどう使うか頭を悩ませている。審査に通ったとの報を受けたその日、吉祥寺に行く用事があったので中央線に乗った。衝動的に途中下車、慣れない道を歩く。鍵ももらってない新居の前でしばし悦に入った。
 
 

 
 

さすがにこの画像だと特定されないだろう。なのでこの写真にはまるで意味がないが、とりあえず嬉しくて掲載。長かった、ここまで本当に長かった。

仕事を終え携帯電話を見るとKさんから着信が入っていた。電話すると菓子の礼を言われた。僕も重ね重ねお礼を言った。なぜかしらまたお世話になるような気もするが、残念ながら先方はそれを願ってはいないだろう。ありがとう、そしてさよなら、Kさん。

次週最終回
何をどうするかは決めてないけれど、新居には入れる予定。乞うご期待。
 
 
 
 
 
-ヒビレポ 2013年12月18日号-

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