MAKE A NOISE! 最終回

メリル・ストリープのお言葉(第1回をご参照下さい)に従い、まだ知れ渡っていない面白い映画をロンドンからMake a noise!
 

ローカル

 

山口ゆかり
(第13号で「ロンドンでゲイ、レズビアンたちに混じる」執筆)
 
 
 
前に座った女性は英語圏の人だったようです。上映前に鳴った携帯に、英語でベルリン国際映画祭試写会場にいる旨伝えているのが聞こえてきました。
少し間があって、「そうね。でも、必ずしも好きな映画ばかり見てるわけじゃないから疲れるけど」、また間、そして「それでもエキサイティングなことには違いないけどね」
丸聞こえでしたが、プログラム表など眺め、注意を払ってませんよ演技をしながら、心の内で激しく同意。

私も、よく、そっくりな会話を交わします。楽しそうと言われると、けっこう疲れると訴えたくなる。でも「大変ねえ」という方向に流れすぎると「映画見れてうれしいけどね」なんて引き戻したり。最初からそう言ってた相手は、どっちやねん!でしょうけど、どっちもです。
例えば、この10月のロンドン映画祭では56本見ました。新作映画の数々にハイテンションな日々ですが、さすがに疲れます。疲れを忘れるのが、自分にとって新発見の面白い映画にあたった時。

2008年ロンドン映画祭でのそういう1本が『ジャーマン+雨』でした。しかも邦画!
ゴリラーマンとあだ名される主人公を、その名に恥じない女優さんがやっています。よくある、美人女優が身をやつして不細工役をやるのは、しらけます。たいてい後半で美人になったりするので、しょうがないですが。
ゴリラーマンは美人に変身したりしません。見た目がアレなだけでなく、性格もアレです。16歳なのに学校にも行かず、植木屋のアルバイトをしたり、小学生相手のたて笛教室を開いたりして1人で暮らしています。ゴリラーマンなルックスと性格で、どっこい生きてる姿が笑えて、泣けます。
 

 
 
 

 
 
一般上映で見たのですが、会場には日本人の姿もチラホラ。上映後、やはり1人で鑑賞していたらしい年配の日本のご婦人に声をかけられました。「何を言いたい映画だったのでしょうねえ」という意外な問いかけ。
人生賛歌と言えば言えるかもしれませんが、その言葉さえ胡散臭く思わせるほどの魅力に満ちた映画です。日本から凄い新人出現!と高揚していた私は、言葉では上手く表せないようなことが言いたい映画である。そういう映画こそ良い映画だったりする。という意味のことをもっと回りくどく言い募って、怖がらせてしまいました。

その横浜聡子監督の『ウルトラミラクルラブストーリー』が、翌年、同じロンドン映画祭に! それが大人気でチケット入手できず、涙をのみました。
そして、今年のレインダンス映画祭で横浜監督のミニ特集が見られました!中篇『りんごのうかの少女』に短編『おばあちゃん女の子』『真夜中からとびうつれ』の3本セットです。
横浜監督が何故りんご農家なのか? なんと青森県出身者だったのです! 何を隠そう、私も青森県出身、日本の凄い新人から青森の凄い新人と変換して、いっそう、うれしくなったのでした。
 
 
横浜聡子監督 2013年レインダンス映画祭(撮影:著者)
 
 
ということは、松山ケンイチ主演の『ウルトラミラクルラブストーリー』は青森県出身監督による青森県出身俳優主演映画だった!
私は松山ケンイチを俳優としてだけでなく青森県民として高く評価しています。なまってもクールなイメージが壊れない初の青森県民です。
それまで、青森から、なまったままデビューするのは、吉幾三のように田舎キャラでいきたい場合に限られました。ことさら田舎イメージを強調したくない人は、共通語にするしかなかったのです。
松山ケンイチはナチュラルになまる。なおかつクール。不可能を可能にした男です。

さて、レインダンスでの横浜監督特集、『ジャーマン+雨』のゴリラーマン野嵜好美が『おばあちゃん女の子』でも主演でした。こちらでは徘徊妊婦を演じています。ほんとにワン・アンド・オンリーなかんじの女優さんです。
『真夜中からとびうつれ』は、それぞれに不思議な作品の中でも一番不思議でした。多部未華子がブルーの不思議な衣装で不思議な少女を演じ、不思議な映画の箱がキーとなっています。
『りんごのうかの少女』は、りんご農家ばかりか、太宰治の言葉や、津軽三味線をかきならすイケメン外人まで出てきて、どっぷり青森。りんご箱詰めのアルバイトをしたことも、太宰の生家『斜陽館』に泊まったこともある私は、懐かしさにひたりまくりました。
少女の両親役が工藤夕貴と永瀬正敏というのは、青森の人でなくても懐かしいところでしょう。ジム・ジャームッシュ監督『ミステリー・トレイン』から四半世紀を経ての共演です!
 
 

 
 
未だ見ぬ『ウルトラミラクルラブストーリー』も青森ロケだったというのを、さっき知りました。ローカルをグローバルにしてくれる監督です。

郷土愛を炸裂させてるわりには、全然、帰省してない私ですが、みなさまは年末年始いかがお過ごしでしょうか? お国に帰る人も帰らない人も、お休みの人もお仕事の人も、良い年をお迎えください。今期もおつきあいいただき、ありがとうございました!

 

 
 
-ヒビレポ 2013年12月31日号-

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