今朝はボニー・バック 第28回

あの日晩飯に出た赤飯の味を僕達はまだ知らない。その2

ボニー・アイドル
(第11号で「原稿料よりバイト料が多くても、ぼくは断然ライターだ!」執筆)

 
 
 
高畑勲氏の14年ぶりの監督作品「かぐや姫の物語」を封切り初日に観に行った。さすがはジブリ映画、さすがは14年ぶりということで、公開から今まで色んな人が色んな媒体で色んなことを言っている。ぼくも一言二言いいたいことはあるのだけれど、過去にポータルサイトでジブリ映画に関するコラムみたいなものを書いたらジブリ映画を愛してやまない環境右翼の方々からツイッターで糞味噌に言われたので、少しだけに止めておきます。
ぼくが注目したのは物語中盤、都に移り住むにようになったかぐや姫が縁側で足をブラブラさせて落ち込んでいるシーン。かぐや姫で一発当てて調子こいてるじいさんはばあさんに何かあったのか尋ねる。耳打ちで事情を聞いたじいさんは喜色満面、テンションはさらに上がり、ウェルカムパーティの開催を宣言。その様子にさらに塞ぎ込むかぐや姫……。
 

 

言わずもがなだが、かぐや姫がナーバスになっていたのは初潮が来たからである。
ちょっと話はズレるが、この女子が初潮を迎える場面というのを高畑監督は過去にも描いている。「おもひでぽろぽろ」、略称「おもぽろ」の主人公の回想シーンの中でだ。この作品では初潮を通して小学5年生の男子と女子間の性の捉え方に対するギャップを表現していた。中でも、「女子だけが視聴覚室に集められて何やってんだ?」とクラス中の男子が噂するシーン。ついこの間までどんな授業するにも男子と女子一緒だったのに、なぜ女子だけ…。
男子が人生で初めて直面した難問に対して、「おもぽろ」公開前にもさまざまな著名人が言及してきた。松本人志氏曰く「女子だけ豚の丸焼きを食ってるのかと思ってた」。また、みうらじゅん氏は「フェリーニの難しい映画を見ていたのでは」と見解を述べている。
私見だが、大の男がこの出来事を何十年にも渡って引きずっているのは、疑問というよりもあの時味わった疎外感がトラウマになっているのではないだろうか。近いのは、女友達が飲み会の予定を立てているので「オレも参加する!」と手を挙げたら、「女子会だからダメ〜」と拒否されたとき。心の中では「三十路過ぎて何が女子会だ、コラ!」と毒づいているが、同時に小学5年のときの思い出がフラッシュバック。そうか、あれは学校主催の女子会だったのか。
自作で2度も同じテーマを描くんだから高畑監督も苦々しくさぞかし女子会を苦々しく思っているのだろう。ともあれ、テーマをメタ的に描きがちな宮崎駿監督に比べて、ズバッと本質を突いてくるあたりは好感が持てる。

で、なんだっけ。そうだ、赤飯だ。かぐや姫に初潮が来た日、赤飯が出たシーンがあったかは覚えていないけど、パーティが開催されたんだから間違いなく出ただろう。かぐや姫と同じように、初潮を迎えた日赤飯が出たかどうか行きつけの飲み屋や忘年会の席で同席した女性に訊いたんだった。最初はイヤな顔をされるかと思っていたけど、意外にどの女性も協力的。アルコールの入った頭をフル回転させて当時の記憶を引っ張り出してくれた。以下はアンケート結果になります。
「水疱瘡にかかって寝込んでいた日に来たので、赤飯どころかアレ自体もそんなに覚えていない」(33歳新婚主婦・毎年恒例の飲み会の席上で)
「一応お母さんには話をしたけど、普段と変わったものは食べなかった」(27歳OL・近所の飲み屋で)
「お母さん経緯で聞いたおばあちゃんが夕飯に赤飯と鯛のお頭付きを作ってくれた」(25歳バーテン・近所の飲み屋で)
「そういうことが来るのは知っていたので、誰にも言わずに一日中部屋で寝込んでいたような気がする」(31歳バーテン・新宿ゴールデン街のバーで)
「一緒に住んでいるおばあちゃんが次の日の朝に材料を買ってきて赤飯をたいてくれた。ちなみに、赤飯に入れるのは小豆じゃなくてササゲっていう豆なのよ」(30代後半OL?・新宿ゴールデン街のバーで)

今のところ調査したのは5人だけだが、そのうち2人が赤飯を食べたと回答。調査をする前は正直、若い世代を対象にしたのでは赤飯女子を見つけるのは不可能かと思っていた。「ヒビレポ」編集担当の平野さんも「(この風習って)少なくとも高度経済成長期には廃れたんじゃないのかな」と言っていたし。それが、20代、30代にも存在していたのである。しかも、どちらも作ってくれたのはおばあちゃんだったという。
つまり、戦後にはまだ多くの家庭で娘が初潮を迎えたら赤飯を炊いていたが、アメリカからデリカシーやプライバシーといった概念が入ってきたことで減少していった。ところが、おばあちゃんという当時を知っている存在を媒介とし生きながらえている赤飯女子もいるということが言えるのではないだろうか。そういえば、ぼくのばあちゃんも赤飯が好きだったなあ。孫娘に作る体で自分が食いたかっただけかもしれないけど。
しかも、今回、「食べた」と答えた女性二人の共通点はそれだけではない。家族に男がいないのである。どういった理由でいないのかはさすがに訊けなかったが、親はお母さんだけ。しかも兄・弟の男兄弟もなし。気兼ねすることのない女だけの家庭だからこそ赤飯が出せる。これも言えるかもしれない。ただ、ぼくとしては娘が大人になった日に見せる父親の動揺やカレーやカツ丼を好む男兄弟のリアクションといったものに興味があったので、物足りなさが残ったのは否めない。今後の調査結果に期待したところだ。

最後に、赤飯に代わる初潮を迎えたら食べる新メニューを提案して今回の締めとしたい。というのも、先程も言ったようにただでさえ赤飯を炊く家庭が少なくなっているこのご時勢、「赤飯=お祝い」と結びつけるのは難しいのではと思ったからだ。それに今の子どもは赤飯あんまり好きじゃないしね。
赤飯の「お祝いごと」「華やか」といったイメージを崩すことなく、それでいて子どもが好きな料理といったら「チキンライス」である。デリカシーの面もバッチリで、カツオのような小賢しいガキでも、まさかチキンライスがワカメが初潮を迎えた記念だとは思うまい。さっそく作ってみた。
 

 
うーん、何だか思っていたより地味だ。ディナーのメインとしては物足りない。卵で包んでみることに。
 

 
見た目はグッと華やかになったが、果たしてこれで娘は自分のお祝いだと気がついてくれるだろうか…。ケチャップで何か文字を入れてみることに。
 

 
よし、バッチリ!ということで、初潮の日に食べる新メニューは「オムライス」に決定!
 
 
 
-ヒビレポ 2014年1月8日号-

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